国籍問わず全ての子どもの小学校への円滑な接続を目指して 「外国にルーツのあるご家庭の就学支援に関する調査」レポート公開
2025.07.24
どろんこ会グループは、全国でどろんこ会グループの保育園をご利用いただいている外国にルーツのあるご家庭の保護者の方とその保育に携わるスタッフを対象に、就学支援に関するアンケート調査を実施しました。
(※外国にルーツのあるご家庭とは、国籍を問わず親のいずれか、または双方が外国出身者である場合を指します。)
文部科学省が2024年8月に発表した「令和5年度 外国人の子供の就学状況等調査」によると、不就学の可能性があると考えられる外国人の子どもの数が8601人(うち小学生相当数は5601人。全体数は前回調査より5.1%増加)であることが明らかとなりました。保育園を利用する全ての子どもに対し、小学校へ円滑な接続ができるよう支援することも保育園の務めであることから、今回は就学支援をテーマとしました。
まとめ
- 回答にご協力いただいた保護者ご自身が外国にルーツのある方は、中国出身の方が最も多く、次いでベトナム、韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、モンゴル、ネパールとアジア地域が中心だった。
- 小学校入学に向けて4割近くの保護者が「気がかりなことがある」と回答。
- 子どもに関して最も気がかりなことは「入学後のいじめや差別」。次いで学習面の不安も大きい。
- 保護者ご自身においては、PTAなどの保護者活動への不安以外に、学習用品などの準備や書類の記入といった準備段階での不安も挙げられた。
- 就学に向けて保育園で希望する支援について、最も多いのは「日本語の読み書きを習う時間」。また、「小学校に関する情報提供と保護者同士のつながりづくり」を求める声も多かった。
- 回答したスタッフが行っている就学に向けての支援は、「子ども自身が小学校の様子や雰囲気を知るための小学校との交流」、「子どもの育ちや言語獲得状況、園での支援の経過を小学校に報告」することが中心だった。
- スタッフから自治体や支援団体に対しては、より分かりやすい情報提供をしてほしいという要望もあった。また、持ち物や小学校生活について具体的なイメージがもてるような説明会や見学会といったサポートがあるとよいという声もあった。
保護者の結果
調査概要
調査期間:2024年11月15日~2024年12月20日
調査機関:どろんこ会グループ Doronko LABO®(自社調査)
調査方法:PCやスマホなどからアクセス可能なアンケートフォーム。
※言語は日本語、英語、中国語(簡体字)、中国語(繋体字)、やさしいにほんごから選択。
調査対象者:2024年7月時点で在籍を確認した、外国にルーツを持つ園児の保護者
有効回答者数:92人
母親78%、父親21%、その他1%
出身国は中国、ベトナム、台湾、韓国、フィリピン、インドネシア、マレーシア、モンゴル、ネパール、アメリカ、シンガポール、コロンビア、ブラジル、フランス、イギリス/シンガポール、日本/韓国。
回答者が日本人の場合、パートナーの出身国は韓国、中国、フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、スリランカ、ネパール、ニュージーランド、オランダ、フランス、イタリア、ポルトガル、オーストリア、イギリス、フィンランド、イタリア/イギリス、ロシア/ブラジル、セネガル、アメリカ、メキシコ。
外国にルーツのある家庭の4割近くが小学校入学に向けて気がかりが「ある」
「小学校入学に向けて気がかりなことはありますか?」という質問に対し、「ある」と回答した方が42.4%、「ない」と回答した方が39.1%と、「ある」が3.3%高いものの、ほぼ拮抗しています。

「入学後の差別やいじめに対する不安」が1位
「小学校入学に向けて気がかりなことが『ある』と回答した方に対し、お子さまに関してはどのようなことが気がかりでしょうか?」と尋ねたところ、入学後のいじめや差別への心配が43.3%となりました。
次いで、勉強についていけるかどうか、日本語での授業について、母国との学習内容の違いなど学習面での不安があることも見えてきます。また、11.9%の方が宗教食の対応についても気がかりをもっていることが分かります。

「その他」を選ばれた方の自由記述においては下記のような回答が得られました。
・英語の授業の少なさや英語力の向上に不安。
・子ども、保護者、先生から「外人」や「ハーフ」という単語を使って話しかけられることへの違和感。
・日本の教育だとプレゼンテーション能力が身につかない。
・風紀(髪型、髪色)。
・日本語教育かアメリカ型教育か、インターに行くか公立校に進むか、進路に迷う。
保護者自身の気がかりは「PTAなどの保護者活動」
「小学校入学に向けて気がかりなことが『ある』と回答した方に対し、保護者ご自身に関してはどのようなことが気がかりでしょうか?」との質問に対しては、PTAなどの保護者活動への心配が最も高く、28.8%を占めました。
次いで、学校の先生とのやりとりへの不安が挙げられました。一方、学習用品などの準備や、書類の記入といった準備段階の不安も高いことが分かります。

「その他」の回答においては下記のような内容が挙げられました(抜粋要約)。
・保護者自身が日本語の読み書きに不安があり、子どもの宿題の手伝いや学校からの連絡を理解できるか不安。
・学校活動の負担が全て働く母親に来ること。
日本の保育園に求める支援の1位は「日本語の読み書きを習う時間」
「小学校入学に向け、保育園でどのような支援があるとよいと思いますか? 」といった質問に対し、最も多かったのは「日本語の読み書きを習う時間」35.1%でした。
次いで、小学校に関する情報提供と保護者同士のつながりづくりを求めていることが分かります。また、学習用品などの準備や、書類の記入といった準備段階でのサポートも必要とされていることも分かりました。

「その他」の回答においては日本語の書類に対する懸念や、卒園後のつながりへの意見がありました。
・できる限り外国語でも就学に向けて書いている書類があると、共有できる。
・インターネットの翻訳を使っても、うまく翻訳されない場合があり、私たちを混乱させるので、重要な書類は英語版を提供していただければ非常に助かります。
・一緒に保育園に通った子たちとの縁が続くよう、日本学校に通わない外国人の同級生に対しての理解や知識を教えてくれるとうれしいです。
・もう少し広範囲で他の保護者が持っている小学校に対する情報を共有できる場やつながりを作るサポートをいただけるとうれしいです。特に、年長の保護者さんなどは情報をもっと持っていらっしゃると思うので教えていただけると助かるなと思ってます。
・おなじ しょうがっこう に いく こども の おや と はなしたい。
・市の取り組みについて教えてほしい。
・いじめの対策、相談できるところを知りたいです。 法律上で弁護士など支援できるところがあるかを知りたいです。
スタッフの結果
調査概要
調査期間:2024年11月15日~2024年12月20日
調査機関:どろんこ会グループ Doronko LABO®(自社調査)
調査方法:PCやスマホなどからアクセス可能なアンケートフォーム
調査対象者:就学を控え、外国にルーツをもつ園児の保育に関わる保育園スタッフ
有効回答者数:72人
保育園での主な支援は小学校への接続
「外国にルーツをもつ子どもおよび保護者に対し、就学に向けてどのような支援をしていますか(あるいはする予定ですか)?」という質問に対し、小学校との交流や見学を通じ、子ども自身が小学校の様子や雰囲気を知ることに取り組むと同時に、子どもの育ちや言語獲得状況、園での支援の経過を小学校につなぐことを行っているとの回答が半数を超えました。
一方、保護者への調査において要望の高かった日本語の読み書きを教えたり※、小学校への持ち物についてやPTA活動の情報の提供、保護者同士のネットワーク作りに取り組んでいるスタッフは少ないことが分かりました。
※どろんこ会グループでは就学前教育として、3~5歳児に鉛筆の持ち方・点と線・数字と文字・足し算等を指導するのびのび教室を実施しています。

自治体や地域団体にはよりきめ細やかなサポートを期待
「自治体や地域団体からどのようなサポートがあるとよりよいと思いますか?」という質問に対し、自由記述で回答を求めたところ、下記のような意見が上がりました。
【言語面について】
- 行政手続きや説明会の場面での通訳・同行サポートがあるとよい。
- 英語以外の多言語での資料配布があるとよい。
- やさしい日本語での案内があるとよい。漢字は読めなかったり、翻訳アプリを使わないと分からないという実際の意見を聞いたことがある。
【自治体・地域の支援団体から園への連絡について】
- もう少し分かりやすく、サポートを知らせてほしい。
- 自治体から直接こういったサポートがあることがわかるような冊子の送付があるとよい。
- 日本の小学校の1日のスケジュールや特質、母国との違いや学校の選択肢等を年長になった年度始めに配布、または配信があると見通しを持てると思う。
【コミュニティづくりについて】
- 同じルーツの方が気軽に集まれる場が近隣の生活の場にあるとよい。
- 安心して暮らせるように地域全体を巻き込んだサポートがあると安心すると思います。
- 同じ地域や国、宗教を持つ先輩ママからの話を聞く機会が気軽に持てるようなシステムがあるとよい。
- 外国籍だけでなく、同年代の子どもを持つ親として、気軽に集い・話ができるような場の提供。そのスタッフが多言語を話せると、円滑に進める事ができると思う。
【他国のことを知るためのサポート】
- 他国の文化について職員にも知ることができるようなやり取りができる場作りのサポートがあるといい。
- 保育士に対する英語等の外国語講座があるとよい。
【サポート時の具体的な対応について】
- 細かいケアができ、寄り添った会話のできる窓口があるとよいと思う。
- 利用料が高かったりするので、分からない、知りたいことができた時に気軽に利用できるサポートがあると良いと思う。
- 市からの就学に向けての案内を外国にルーツを持つお子さまをお持ちのご家庭向けの物に変更し、保護者様から問い合わせをしなくてもスムーズに就学の準備の一歩が踏み出せるようにしてほしい。
- 保護者が不安に思っていることへのサポート。就学へ向けてどのような準備が必要かなど詳しく話す機会があるとよい。
- 小学校生活について、準備品も含め、具体的な話を聞ける会が開催されると、イメージがつきやすいと感じる。
- 日本の小学校での生活をイメージできるように、保護者が学校見学できる機会があるとよいと思う。
今回のアンケートを通じ、外国にルーツのあるご家庭の保護者様がさまざまな不安を抱えていることが明らかとなりました。
どろんこ会グループでは、小学校に円滑に接続するために各施設で試行錯誤していますが、持ち物や保護者活動など、より具体的な情報提供が求められていることも分かりました。引き続き、外国にルーツのある家庭がより安心して施設で過ごすことができ、就学を見据えての支援ができるよう、今回のアンケート結果を活用してまいります。







