保育研修の新たな一歩 台湾から2名の研修生を受け入れ 台湾教育省×どろんこ会グループ
どろんこ会グループは2025年2月に、台北駐日経済文化代表処と「台湾研修生海外研修支援事業(以下、本プロジェクト)」に関する協定書を結びました。本プロジェクトでは、台湾の若手保育者が日本の保育現場における実践や子どもとの関わり方を学ぶことをはじめ、日本と台湾の保育者による相互の学び合いも実施します。文化や背景の異なる保育者同士が学び合うことで、より豊かな保育実践を育むことを目指します。

2025年5月末から6月上旬、2名の研修生が滞在。中目黒どろんこ保育園(東京都目黒区)、香取台どろんこ保育園(茨城県つくば市)、メリー★ポピンズ アトレ川崎ルーム(神奈川県川崎市)の3施設で研修しました。
どろんこの保育に驚きと感動
研修初日は東京都心部に位置する中目黒どろんこ保育園で、法人の理念や保育方針を学ぶオリエンテーションからスタート。その後、さっそく保育研修に入りました。「都心の保育園では室内での活動が多いと思っていました」と研修生の張さんは言います。しかし、中目黒どろんこ保育園では、自然とのふれあいを重視し、子どもたちが自ら遊び、協力し合う姿を見て、張さんは「子どもたちの自主性の高さに驚きました」と話します。

また、畑仕事やバイキング形式の給食など、「食育と農業が、子どもたちの生活と学びに直結していることが印象的でした」と研修生の荘さんは言います。中目黒どろんこ保育園の子どもたちは、週2回バスで近くの農園に出かけ、畑仕事をしています。畑で採れた野菜は、給食や食育活動に使われます。住宅地にありながらも、自然に触れられる環境を創り出しているところに荘さんは新たな気づきを得たようです。

どろんこ会のインクルーシブ保育を肌で感じる
研修中盤では、認可保育園、児童発達支援事業所、学童保育室、放課後等デイサービスの4つの機能を併設した香取台どろんこ保育園を訪問しました。研修生は保育園と児童発達支援を併設することで、子どもの成長を総合的に支え、専門的な支援が日常の中で受けられることを学び、台湾との制度的な違いに強く関心を寄せていました。

特に印象的だったことを荘さんに尋ねると、「嘔吐のアクシデント時の対応や障害のある子どもの避難誘導など、実践的な配慮の大切さを実感しました。インクルーシブ保育の本質は、こうした日常の中にある」と振り返っていました。
駅直結の保育園での工夫も注目
JR「川崎」駅直結の駅ビル内にあるメリー★ポピンズ アトレ川崎ルームでは、限られたスペースを生かした工夫や、地域とのつながりに注目しました。広い保育室ではないため、子どもたちの動きによっては、ぶつかりやすい状況になりますが、そのような場面でこそ保育者の関わり方がとても重要です。研修生のお二人は、子ども同士がぶつかったときに気持ちを受け止めながら仲立ちしたり、一人ひとりの様子をよく観察して、必要なときにさりげなく声を掛けたりするなど、きめ細やかな関わり方を通して学びを深めました。
子どもたちが散歩に出かける際には、駅前商店街に並ぶ店舗の前を通っていきます。その途中でお店の方と「こんにちは」とあいさつを交わしたり、子どもたちの様子に声を掛けてもらったりするなど、自然な交流が日常的に生まれていました。張さんは、「子どもを地域で育てる」という保育の在り方に強く共感し、台湾でもこうした地域に開かれた保育の実践を広げたいと感じたようです。

保育園での研修最終日にはスタッフを交えた座談会も実施しました。座談会は、日本と台湾の保育の考え方や給食の違い、さらにトイレトレーニングの方法など、さまざまなトピックを語り合う貴重な時間となりました。
研修期間の終盤には、どろんこ会の農福連携の取り組みを知ってもらうために、新潟県南魚沼市で田植え体験を行いました。また、南魚沼生産組合のライスセンターも見学し、稲の植え付けから収穫、精米、そして発送に至るまで、給食に提供するお米の生産・流通を一貫して手がけていることを学びました。

研修で得た気づきと未来への展望
今回の研修について研修生はこう振り返りました。
- 時間はとても限られていましたが、保育というのは短期間で完結するものではなく、日々の積み重ねの中で育まれていくものだと感じました。食育も「なぜするのか」という背景まで理解するにはまだ時間が必要です。機会があれば、もっと長く園で研修をして深く学びたいと思います。(荘さん)
- 乳幼児期の子どもたちと関わるのは初めてで、とても貴重な経験になりました。普段は小学生と関わることが多いため、将来的に学生たちをサポートしていく立場としても、保育の大切さをしっかり伝えていきたいと思っています。(張さん)
今回の研修を通して、国を越えた保育の対話が、現場に新たな視点と気づきをもたらすことを強く実感しました。この学びを一過性のものとせず、継続的な実践交流へと発展させていくことが重要です。今後もどろんこ会グループは、台湾の若者たちとともに、子どもたちの育ちを支える「学びの共創」の輪をさらに広げてまいります。国境を越えた実践交流を通じ、多様な視点と経験を融合させ、より質の高い保育環境の実現を目指していきます。

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