Doronko Agriの挑戦ー第1回創業編「保育園給食に安心・安全を届ける農業エコシステムを」全3回

2025.10.23

#農業

2022年4月、どろんこ会グループに新たな農業法人が誕生しました。その名も「株式会社Doronko Agri(どろんこアグリ)」。子どもたちが口にする野菜は安全でおいしいものにこだわりたいとの思いから、給食野菜の減農薬栽培に挑戦しています。さらに、持続可能な循環型社会の実現を目指し、農福連携や食育、地域農家との協働など、独自の取り組みを次々に展開。その活動の全貌を、全3回に分けてご紹介します。

給食シーン

お米から野菜まで、安心・安全な給食食材を求めて

保育と発達支援のどろんこ会グループが、実は農業にも力を入れていることをご存じでしょうか。子どもたちの大切な体をつくる給食は、安心・安全な食材にこだわりたいー。まずは給食米の自給自足を目指し、2013年に株式会社南魚沼生産組合を設立しました。

新潟県南魚沼市にあるどろんこ会グループの田んぼ
新潟県南魚沼市にあるどろんこ会グループの田んぼ

新潟県南魚沼市に田んぼを確保し、ライスセンターも建設したことで、稲の植え付けから収穫・精米・発送まで一気通貫の供給システムを確立。農薬をほぼ使わない給食米の自給自足を実現しています。

環境や地域社会への貢献が評価され、2022年には環境省主催のグッドライフアワードにて「実行委員会特別賞 サステナブルデザイン賞」も受賞しました。

グッドライフアワードの表彰式で舞台に上がった高堀代表と安永理事長
「グッドライフアワード」の表彰式に臨む高堀代表(左)と安永理事長(右)

次なる目標は給食野菜の自給自足です。Doronko Agriは農薬や化学肥料を極力使わない栽培方法を追求しつつ、農地と生産量の拡大を推し進めてきました。

0.6haからスタートした畑も現在は東京ドーム1個分以上の5.3haまで広がり、収穫量も順調に拡大。埼玉県を中心に、ニンジン、タマネギ、サツマイモなど複数の野菜を生産しています。

どろんこアグリの畑で収穫した玉ねぎ
収穫したタマネギ

永久に持続する「循環型ビジネスモデル」を農業に

中でもニンジン、タマネギなどの露地野菜は安定的な供給が可能になったことから、今年(2025年)6月、給食調理を行っているどろんこ会グループ全施設への提供を開始しました。

順調に事業を拡大するDoronko Agriの高堀代表に話を伺います。

ー改めて、Doronko Agri設立の経緯を教えてください

高堀:給食食材の自給自足は、どろんこ会グループが創業当時から思い描いてきた姿です。子どもの成長を支える大切な食材を、自分たちの手で育て、調理し、子どもたちと一緒に食べる。その実現に向けて事業計画を立て、毎年着実に実行しています。

畑で子どもと小松菜を収穫する高堀代表
子どもと共に小松菜を収穫する高堀代表

高堀:昔ある地方を訪れた際、畑に勢いよく農薬を散布する光景を目にした時の衝撃を今でもよく覚えています。地元の方は表面を丁寧に洗い流して食べていたけれど、スーパーで買う私たちはその姿を知らない。「子どもの口に入る食材は安心・安全なものにこだわりたい」ー。その一心で立ち上げました。

どろんこ保育園での給食シーン
子どもたちの体をつくる大切な給食を自分たちの手で

ーだから減農薬・有機栽培にこだわっているのですね

高堀:給食は加工することが前提だから、多少形が悪くても虫食いがあっても大丈夫。見栄えよりは農薬を使わずに、安全でおいしい野菜を届けることが私たちの使命です。

同時に、ただ作るだけではなく「稼げる農業」の仕組みづくりが重要だと考えています。田んぼ同様、畑も耕作放棄地や後継者不足の問題が加速している。日本の未来を守るためにも、永久に持続するビジネスモデルを定着させることに力を注いでいます。

埼玉県日高市の畑で農作業をするスタッフ
減農薬栽培を行うDoronko Agriの畑

ー「稼げる農業」に必要なことは何でしょうか?

高堀:安全性やおいしさといった付加価値はもちろん、適切な「流通経路の確保」と「生産量の徹底管理」です。流通面では、どろんこ会の給食を支えてくださっている尾島商店様の発注・配送システムにDoronko Agriの野菜を組み込むことで、品質管理を徹底しつつ中間コストの削減を実現しました。

また、保存性の高い野菜についてはある程度まとめて配送しています。輸送コストを抑えるだけでなく、環境負荷の抑制にもつながるからです。

尾島商店の冷蔵保管庫を視察する高堀代表と安永理事長
尾島商店様の冷蔵保管庫を視察。左から尾島社長、安永理事長、高堀代表

高堀:生産管理においても盤石の体制を整えています。どろんこ会では全施設で野菜の発注量を数値化しており、そのデータをもとに綿密な生産計画を立てています。

天候による影響はあるものの、給食で使いきれない野菜は地元の市場に卸したり、加工用に商品化したりと無駄を出さず、しっかり利益につなげる仕組みを整えつつあります。

一般販売用に袋詰めされたじゃがいも
一般向けにも販売しているDoronko Agriの野菜

ー農福連携の取り組みも重視されています

高堀:Doronko Agriでは障害のある方を正規職員として採用しました。農業の現場では、一定の領域において障害のある方が高い適性を発揮できることは事実です。

どろんこ会では就労継続支援事業も行っていますが、障害の有無に関わらず、就労先は「意欲と所得を創出する場」でなければなりません。価値ある仕事にはきちんと対価が支払われる。そうした当たり前の経営視点を農福連携にも取り入れたい。

農業に携わる大人が、達成感を感じながら自立し生活していくためにも、稼げる農業の仕組みづくりをさらに加速させていきます。

栗の収穫を行う様子
どろんこ会の就労継続支援B型事業所では「TSUMUGI CAFE 武蔵野」を運営。利用者の方が季節の素材を収穫することも

次回は給食を提供する園とDoronko Agriの畑から、現地リポートをお届けします。

連載記事

Doronko Agriの挑戦ー第2回現場編「減農薬栽培の畑と食育の現場に学ぶ、安心給食のつくり方」全3回

Doronko Agriの挑戦ー第3回未来編「人・食・仕事がつながる循環型社会の実現へ」全3回

施設情報

就労支援つむぎ 武蔵野ルーム

TSUMUGI CAFE 武蔵野

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南魚沼生産組合

尾島商店

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