セルフ・キャリアドックを保育業界でもいち早く導入 キャリア相談室を新たに設置

2023.12.07

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どろんこ会グループは2023年4月よりキャリア相談室を設置しました。初代室長に就任した渡邊さんに、従業員のキャリア形成を促進・支援することを目的とした総合的な取り組みであるセルフ・キャリアドックを業界でいち早く導入を進めた背景や今後の展望などについてインタビューしました。

キャリア相談室初代室長の渡邊さん
キャリア相談室初代室長の渡邊さん

スタッフがよりよく生きるための伴走者でありたい

—そもそもなぜセルフ・キャリアドックの導入を進めたのでしょうか?

どろんこ会グル-プではセルフ・キャリアドックを2022年に試験的に導入を始めたのですが、私も同時期に国家資格であるキャリアコンサルタントを取得する際にセルフ・キャリアドックを学びました。

セルフ・キャリアドックとは、2016年に職業能力開発促進法で努力義務化された「従業員に対するキャリアコンサルティングの機会確保」と「能力開発支援を行うこと」を目的とした仕組みのことです。背景には少子超高齢化やIT化の進展など社会が大胆に変化していることが大きく影響しています。その変化に個人も対応し、持てる力を最大限に発揮していくためには「自分を理解する」「仕事を理解する」ことで、自分にとって何が大事で何をしていくことがよいのか?を考えることが、今を生き生きと生きるためにも非常に大切です。私も含め、今社会で働いている人たちはキャリア教育を受ける機会はなかったのではないでしょうか。そのため実は自己理解ができていない人も多いと思います。自分を主役にして、自身を見つめる機会をつくるために、2023年から本格的にセルフ・キャリアドックを始めました。

自分を理解することの大切さを語る渡邊さん
自分を理解することの大切さを語る渡邊さん

—渡邊さんは全国の保育園、発達支援施設をまとめる運営部の部長を務めながら、キャリアコンサルタントの資格を取得されました。多くのスタッフと接する中で思うところがあったのでしょうか?

これまで数多くのスタッフの面談を行ってきましたが、人が葛藤し悩む根底には「よりよくありたい」と望む姿があると感じていました。よりよく生きていくためには何が必要なのか?を考える中でキャリアコンサルタントという資格に出合いました。

キャリアコンサルタントは転職サポートのイメージが強いと思いますが、本質的には個人がよりよく生きていくための気づきをサポートするものです。私が得た学びをスタッフ個人の支援だけでなく、組織の課題解決にも役立てることができるといいのではないかと思っています。最終的にはスタッフ一人ひとりが強みを生かし、個性が認められて生き生きと働き続けられる会社にしていくための支援をしていきたいです。

—セルフ・キャリアドックは具体的にはどのようなことをするのでしょうか?

2時間のキャリア集合研修と1時間の個別キャリアコンサルティング面談を組み合わせて行います。

集合研修では、なぜ今キャリアを考える必要があるのかを時代背景を踏まえて説明した後、自己理解を深めるために、これまでの人生を振り返る個人ワークを行います。その後、受講者同士で各々の人生を共有し合うことで、客観的に自分を見つめる機会とします。

そして個別の面談では、これまでの人生で経験したことを言語化していく中で自分がやりたいこと、できること、組織から期待されていることなどを明確にし、自分の価値観や思考の傾向などへの気づきも促します。そういった気づきが増える、つまり自己理解が深まる・仕事理解が深まることで、自分の今後のキャリアを自分で進んでいける・選べるようになります。

一人ひとりの話に丁寧に耳を傾ける
一人ひとりの話に真摯に耳を傾ける

—研修において、保育業界の特殊性を考慮したり、業界に合わせて工夫していることはありますか?

保育士をはじめ子育てに関わる仕事は、給料が低く子どもと遊んでいるだけの楽な仕事と一般的に思われてしまうことがあります。そういった風潮がもたらす自己肯定感の低さからなのか、「私、保育士しかできなくて」と言う人も多くいます。しかし、保育士・子育て支援の仕事は子どもの命を守るための判断力、子どもだけでなく保護者とも接するためのコミュニケーション力や対応力、各種行事を実行するための調整力やプロジェクトマネジメントなど、さまざまな能力を必要とします。AIには取って代わることのできない仕事だと思います。研修では保育士をはじめ社会福祉士や臨床心理士、調理師や管理栄養士、看護師など子育て支援に関わる全ての専門職がいかに素晴らしく誇り高き仕事であり、人格形成の基礎となる乳幼児期に関われる尊い仕事であるということを伝えたいと思っています。「教育は文化を変える」という素晴らしい仕事をしていること、またそこで働く「人は生涯、発達する」ということを踏まえて、チャレンジすることに遅すぎることはないということを伝えていきたいと思っています。

実際にセルフ・キャリアドックを受けたスタッフからはこんな感想が聞かれました。

  • 客観的な視点から自身の思考や強みに気づかせていただきました。
  • 今後伸ばしていくと良いスキルが明確になった。
  • 自分の向かう道、走ってきた道を間違いではないと言われているような気がして、素直に話せた気がした。
  • 自身のキャリアを悲観的にとらえておりましたが、前向きにとらえるきっかけになりました。

—キャリアコンサルタントとして渡邊さんが特に心がけていることはありますか?

カウンセリングの際には、ただ単に寄り添うのではなく、一人一人が唯一無二の存在として自分がどうありたいのか、どうしたらよりよく生きられるのかを一緒に模索し、「コンサルタント」というよりは「伴走者」のつもりで話を聞いています。人生100年時代、労働者である私たちは自分で「働き方」を主体的に選んでいく必要があります。保育士はもちろん、つむぎで発達支援に携わる専門士、調理スタッフなど全てのスタッフに、なぜ今の職種を選んだのか?どのような姿を目指したいのか?などを考え続けてもらい、全員がよりよく生きることができ、自分のやりたいことに取り組めたら最高だと思います。

スタッフ一人ひとりが生き生きと働けることを願う
スタッフが生き生きと働けるようになることで会社も輝く

—キャリア相談室の今後の展望について教えてください。

最初は一部のスタッフからスタートしましたが、今後は全員がセルフ・キャリアドックを受けられるよう、また希望者にいつでも来てもらえる相談室を目指します。

中にはセルフ・キャリアドックを経て、国家資格キャリアコンサルタントを取得した保育園の施設長もいます。そういったスタッフとも一緒に取り組んでいければと思っています。一方、会社にもスタッフの声を伝えることでよりよい組織開発につなげていき、労働者に選択肢がある中で「ここで働き続けたい」と思ってもらうには何が必要なのかも考え続けていきたいと思います。

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