日常に溶け込む「発達支援つむぎ 吉祥寺ルーム」の実践 ──地域連携活動(中)
2026.03.26
インクルーシブ保育のフロントランナーとして、全国約190の施設でインクルーシブ保育・支援に取り組むどろんこ会グループ。子どもが将来、地域の一員として自立して生きる力を育むために、地域との連携活動に力を入れています。
子どもの「人生の基盤」を育むホンモノの体験を
東京都武蔵野市にある「発達支援つむぎ 吉祥寺ルーム」は、地域との連携活動を積極的に展開する児童発達支援事業所の一つです。
吉祥寺駅から徒歩5分、賑わう弁天通りから少し入ったビルの2階にあります。外観からは中の様子をうかがいにくいため、一見閉じられた印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実態はその逆です。
発達支援つむぎ 吉祥寺ルームの「TSUMUGI CAFE」や、玄関先に設置してある無人・無料の子ども服リユースサービス「勝手かご」は、子育て世帯に限らず地域のどなたでも利用することができ、地域に開放した施設として運営しています。

さらに、「待つだけではありません。こちらから、どんどん出かけていきます」と笑顔で話すのは三浦施設長です。
例えば――
- 商店街の散歩や買い物
- 道路や公園等の清掃活動
- 武蔵野中央公園の「子ども管理人」として花壇の整備
- 近隣店舗の開店準備の手伝い
- 法人グループ内の保育園の子どもたちと共に畑仕事
- 小学校見学

こうした活動は、子どもたちが将来「地域の一員」として生きていくために本当に必要な経験は何かを問い続け、定期的に見直しを重ねながら続けているものです。
その判断軸は、「地域の日常の中にある活動かどうか」という視点。清掃活動やお店の開店準備は、そこで暮らす人々の日常にあるシーンです。
「特別な日にだけ訪れるお客様のままでいては互いに遠慮が先立ち、子どもの心を動かすホンモノの体験は生まれません」と三浦施設長。子どもにとって真に意味のある支援を行うために、連携先と継続的に関わり、信頼関係を育むことを大切にしています。吉祥寺ルームは、地域の中で、地域の方々と共にある「体験型つむぎ」なのです。
交流3年目。「井の頭自然文化園」の清掃活動
協力体制を築いてきた連携先の一つが、井の頭公園にある都立動物園「井の頭自然文化園」です。交流は今年で3年目を迎えました。

これまで、園内の散策や動物の学習、動物解説員・山崎さんによる園内ツアーなどを通して関係性を深めてきました。毎回、事前に参加する子どもたちの普段の様子や見通しを共有し、配慮や工夫が必要な場面を想定しながら必要事項を確認しています。
そしてこの日、園内の清掃活動のお手伝いをさせていただくことになりました。
15時。動物園の入り口を入った先で、子どもたちと動物園職員の山崎さん、北田さんが合流します。「よろしくお願いします!」と、元気な挨拶で活動が始まりました。

山崎さん:この動物園には木がいっぱいあります。秋から冬にかけて、葉っぱが落ちてきます。お掃除が追い付かないところもあるので、今日は皆さんに手伝ってほしいと思います。
真剣に聞き入る子どもたち。さっそく掃除を行う「いきもの広場」に移動しました。「道にはみ出しそうな葉っぱを箒で掃き出して、きれいにしてください」と山崎さん。

この日、子どもたちは自分たちで手作りした箒を持参しました。穂先には、子ども管理人として活動する武蔵野中央公園からいただいたコキアを、軸には日頃から交流のあるお寺から譲っていただいた竹を使っています。地域とのつながりの中で生まれた道具を使い、地域のために働く。その循環の中に学びの種が詰まっています。

動物園の熊手を借りた子どももいます。自分の背丈よりも大きい道具に初めはとまどいましたが、北田さんが使い方を説明してくれます。
北田さん:Aちゃん、こないだも来たね? 持ち上げなくていいから、気合いを入れて! がんばれ、がんばれ!
次第にコツをつかんできました。落ち葉が一気に集まる様子に「ブルドーザーみたい!」と子どもが声を上げます。
北田さん:そうそう、上手! できたできた、すごい!

ドングリを見つけた子どもには「これはクヌギだね。ここから60年かけて、あれくらいの大きさに育つんだ」と北田さん。やりとりの一つひとつが心に残る体験です。

一人ひとりの得意を活かし合う
落ち葉を掃く子、ちりとりにかき集める子、集めた葉を容器に移す子。それぞれの仕事を進めていくと、落ち葉はあっという間に90Lのごみ袋2つ分になりました。全員できれいになった通路を見渡します。
北田さん:うれしいなぁ、おじさんの仕事が楽になっちゃった。通路がきれいだと見た目がよくて、お客様も気持ちがいいんだよ。

「すごいね、やった!」子どももスタッフも共に喜びます。続いて、集めた落ち葉を園内の所定の場所に持っていきます。90Lの袋は重く、子ども3人でも相当な力が要ります。

「引きずると穴が開いちゃうね。がんばって持ち上げよう!」スタッフが言葉をかけます。一人の子どもが「ここ(袋の口)を縛れば持ちやすくなるんじゃない?」と提案しました。スタッフが早速袋口を縛ると持ち手のようになり、確かに運びやすくなりました。「先陣を切って行動できるのがBくんの強み。すぐに形にしたかった」とスタッフは笑顔で振り返ります。

年長児が持ち上げ、小さな子どもは下から支える。それぞれの得意を生かし、苦手なことは自然に補い合う──共生社会につながるささやかな日常です。
無事、所定の場所にたどり着きました。落ち葉の山に子どもたちの集めた落ち葉が加わり、一層大きな山になりました。この後落ち葉は畑に運ばれ、腐葉土になるそうです。

本日の活動が終わりました。動物園の入り口に戻る道すがら、「助かったよ、ありがとう」と山崎さん。「でしょ?」と得意げな子どもたち。心地よい達成感と共に、おしゃべりがはずみます。

北田さん:さようなら。また来て、片付けを手伝ってくださいね。
山崎さん:大変だったけど、みんな頑張ったね。皆さんのことをまたお待ちしています。ありがとうございました。
「また来るね!」「らくしょうだった!」「つかれた~」
子どもたちの口から思い思いの言葉が飛び出します。晴れやかな笑顔が印象的でした。
「点ではなく、線の支援」を
吉祥寺ルームでは、支援の一環として日頃から清掃活動を取り入れています。地域との連携活動においても、こうした日常の取り組みと地続きになるよう心がけています。その場限りの体験で終わらせるのではなく、日々の積み重ねが子どもの将来へとつながる支援を目指しているからです。
箒やちりとりの使い方を体で覚えることは、「家でもやってみよう」という意欲や公園を大切に使おうとする気持ちを育みます。さらに、就学後の掃除当番など、これからの生活にも自然と結びついていきます。吉祥寺ルームが大切にしているのは、いつでも「点ではなく、線の支援」なのです。
次回は三浦施設長が大切にしている支援観と、その原点に迫ります。







