人も食も仕事も循環し、誰もがよく生きられる社会へ どろんこ会の2022年度を代表二人が語る

2022.04.21

#保育

2022年度のスタートにあたり、今年度どろんこ会グループが取り組む三大トピックについて、代表である安永理事長と高堀代表が語りました。

安永理事長と高堀代表
安永理事長と高堀代表

インクルーシブ施設の真の発展形を実現する1年に

どろんこ会グループは東京都東大和市と協定を締結し、グループ初となる「認可保育所」と「児童発達支援センター」の併設施設の整備運営を担うことを3月に発表いたしました。

東大和尾崎市長と安永
3月、東大和市尾崎市長と面会した安永理事長

高堀代表(以下、高堀):また私たちは茨城県つくば市でも、このインクルーシブ保育の実現を考えてきました。同市では、つくばどろんこ保育園、万博公園どろんこ保育園、学園の森どろんこ保育園、そして院内保育所である医療法人社団筑波記念会 筑波記念病院 アイビー保育園、事業所内保育所である宇宙航空研究開発機構JAXAほしのこ保育園を運営してきた実績があります。

ここでの経験を生かしたいと思っていたところ、つくばエクスプレス「万博記念公園」駅のすぐ近く、小学校の新設予定地の隣に、約1600坪という広さに雑木林や傾斜地といった自然が残る土地を取得することができました。そこに認可保育所、児童発達支援事業所、学童保育、そして放課後等デイサービスを併設した、これまでに類を見ないインクルーシブモデルを立ち上げることを決めました。乳幼児も小学生も、障害の有無にかかわらず混ざり合い、子どもたちがそれぞれの年齢に応じて自由に遊ぶことができ、自己表現ができる十分な広さを備えた環境で、私たちがこれまで取り組んできたインクルーシブ保育の真の発展形を示したいと考えています。それが2023年4月に開園予定の「(仮称)香取台どろんこ保育園」です。

香取台どろんこ保育園の予定地
(仮称)香取台どろんこ保育園の広々とした予定地

安永:私たちは併設ではない単独の児童発達支援事業所も9施設運営していますが、単独の児童発達支援事業所の場合、メインは別の保育園や幼稚園に通い、週2回だけ通所するという利用スタイルがほとんどです。それだとなかなか私たちが考える「障害の有無にかかわらず子どもたちが混ざり合う状況」が日常とはなりません。私は10年間発達支援に携わり、併設施設を実際につくって、障害児こそ太陽、水、土、畑、そういったたくさんの自然物、たくさんの生き物がいる環境で毎日生活することがいかに必要かが痛いほど分かりました。一つでも多くの経験をする中で自分の得意や好きを見つけて、主体性を育んでいくことが大事だと考えています。今回の東大和市のように、単独の児童発達支援事業所ではなく児童発達支援センターが認可保育所と併設されることで、主として通う場所が同じ敷地、同じ屋根の下となり、生活を共にできることの価値の大きさは計り知れません。

10年後の姿を語る安永理事長
法人が目指す10年後の姿から逆算した「今」を語る

高堀:私たちが1998年に埼玉県朝霞市に認可外保育所「メリー★ポピンズ」を立ち上げた当時、公立をはじめとする認可保育園では障害児をなかなか受け入れず、困った保護者の方が認可外保育所で預け先を探すのですがそれでも見つけられず、最後の最後にメリー★ポピンズに相談に来られて、私たちが最後の砦になるという現状がありました。

私たちはそのころから異年齢保育を実践する中で、障害の有無にかかわらず全ての子どもを受け入れるインクルーシブ保育にも取り組んでいました。そして子どもたちの成長を目の当たりにするとともに、保護者に対する子育て支援の必要性を実感しました。その時の体験があるからこそ私たちは今も障害児保育を積極的に受け入れています。以降、たくさんの経験を積み重ねて、どうすればよりよいことができるのか、どんどんブラッシュアップしています。

インクルーシブを実践する宮下どろんこ保育園
認可保育園と児童発達支援事業所「つむぎ」を同じ敷地、同じ屋根の下に併設

そして今、実感しているのは、インクルーシブを実践するには、同じ屋根の下に保育園と児童発達支援事業所をつくることは最低条件であっても、それだけでは全くないということ。つまりいくら施設、環境が整っても、それだけでインクルーシブができるわけではないということなのです。スタッフの意識をはじめとするソフト面が最も重要です。私たちが試行錯誤しながらスタッフの教育にも取り組んできたこの10年の取り組みは、国が目指すインクルーシブ社会の参考にもなると確信しています。インクルーシブ保育の先頭を走ってきたがゆえに周りに対して伝えていくべきことがあると感じています。

どろんこ会が目指す10年後の姿 「Doronko Agri」で取り組む農福連携

安永:私たちは昔から一貫した未来を描いていて、その未来を実現するために今年度何をすればよいかを考え、事業計画を立ててきました。その中の一つが「給食食材の自給自足」です。

子どもたちの血となり肉となる食材、米、野菜、卵、魚をグループ内で生産、加工、調理して子どもたちと一緒に食べるという姿を目指しています。

これまでに、まずは米の自給自足を目指し、株式会社南魚沼生産組合を設立し、新潟県南魚沼市での米の生産、ライスセンターも建設し、精米まで手掛け、給食で提供しています。そして今年度、野菜の生産に乗り出すのが新たな取り組みとなります。

子どもたちの田植えの様子
子どもたちにとって大切なホンモノの体験、田植え

高堀:南魚沼市では、ほぼ農薬を使わない減農薬の特別栽培米を作っています。私は、子どもたちの口に入るものにはなるべく農薬を使いたくないと考えています。野菜も同じように、ほぼ農薬を使わず、できれば無農薬の野菜をつくり給食で提供し、子どもたちの食の安全を確保したいと強く思っています。

そこで本年4月1日に株式会社Doronko Agri(どろんこあぐり)を設立しました。関東地方を中心に土地を借り、ほぼ無農薬に近い有機農法で野菜をつくります。今、埼玉県朝霞市、新座市、日高市、そして東京都西東京市に畑を借り、にんじん、玉ねぎ、栗の生産から始めることを予定しています。

農業について語る高堀代表
子どもたちの食の安全を真剣に考える高堀代表

2013年に設立した株式会社南魚沼生産組合ではライスセンターも建設し、当初は0.6ヘクタールだった栽培面積も今では26ヘクタールまで増え、来年には50ヘクタールとなる予定です。担い手が激減している南魚沼市の中山間地の棚田も引き継ぎ、南魚沼の農業維持と原風景を守る活動にも取り組んでいます。この取り組みは令和2年度新潟県環境賞「エコの芽」部門で受賞し評価されましたが、Doronko Agriにおいても同様に地域に貢献できたらと考えています。

環境賞授賞式の様子
令和2年度新潟県環境賞授賞式の様子

安永:10年後に目指す姿のもう一つに、給食残渣(野菜の皮や芯など調理の過程で出るものと、調理後の残飯を合わせたもの)を現在の50%まで減らすということも掲げています。そのために今年度はまずは70%まで減らすことから開始します。どろんこ会グループのレシピチーム(給食調理に関する衛生・食のプロフェッショナル集団)も、野菜くずを活用した献立の検討に着手しました。

こういった食の取り組みがDoronko Agri、南魚沼生産組合に従事するスタッフや調理に携わるスタッフだけでなく、保育園・発達支援のスタッフ、子どもの食欲・意欲にかかわる全員が考えていけるようにならなければと思います。

さらに、10年後に目指す姿としては、この給食残渣とヤギや鶏の糞を活用した有機肥料集合プラントの建設も視野に入れています。

どろんこ会が目指す10年後の社会に向け、新たに就労支援つむぎが開所

安永:これまで私たちは「インクルーシブ」をキーワードに事業を展開してきました。障害の有無にかかわらず「混ざる」「自分で選択する、自己決定する」というこの二つのファクターを子育てにおいて大事にしてきましたが、これからは調理・用務・農業など保育や支援の現場でも同じように健常者・障害者が共に働くという未来を10年後につくりたいと考え、就労継続支援B型事業所の設立に至りました。今夏、東京都西東京市に「(仮称)就労支援つむぎ 武蔵野ルーム」の開所を控えています。

つむぎ武蔵野ルームの内観イメージ
(仮称)就労支援つむぎ 武蔵野ルームの内観イメージ

さらにこのつむぎ武蔵野ルームには、未就学児の発達支援と、主に中学生・高校生を対象とする放課後等デイサービスを行う児童発達支援事業所を併設します。私はかねてから、障害のある子どもたちこそ、できるだけ多くの経験を重ねて自分の好きや得意を見つけ、自分で職業を選んだり決めたりできる未来をつくりたいと考えていました。そのためにも、子どもたちが大人がリアルに働いている姿を見ることができる場所が必要だと考えていたのです。

私がこう考えるようになった背景には、高堀と共に大学時代に学習塾を経営していた時の経験があります。そこでは発達障害や脳性まひといった障害をもつ子どもたちを多く教えていました。その子どもたちを見てきて、健常児と障害児の間に大きな差があるのではなく、全ての子どもに得手不得手があり、その得意を見つけ伸ばすこと、チャレンジする気持ちを育むことが必要だということを実感してきました。また保護者亡き後も自分で生きていけるように、自分の力で歩き、決めることのできる支援をしていかなければならないということを常に考えてきました。

つむぎ武蔵野ルームの内観イメージ
大人と子どもが混ざり合う空間をつくる

高堀:塾を経営していた当時、100人以上の生徒一人ひとりと向き合ってきて、その子どもたちが生き生きとやりがいをもって生活することこそが大切だと考えるようになりました。そのために自分たちには何ができるかという視点でサポートをしてきました。今回開所するつむぎ武蔵野ルームでも、単純作業ばかりをするような作業所ではなく、全ての大人、子ども、そして利用者だけでなくどろんこ会グループで働く従業員も含め皆が生き生きと働き、これからの社会を生きていける力を育めるような環境の提供をすること、そこに全力を傾けたいと考えています。

どろんこ会グループが今後構想する社会は「人も食も仕事も循環し、0歳から人生を終えるその時まで、誰もがよく生きられる社会」です。これらの新たな取り組みについては今後ホームページなどで随時お知らせいたします。2022年度もどろんこ会グループの取り組みにご注目ください。

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