保育業界の更新ー22年目のどろんこ会グループ、見据える先

2020.05.14

#その他

代表インタビュー 全施設

2020年度で設立から22年目を迎えるどろんこ会グループ。21年間の間で、保育園に求められるニーズは移り変わりを見せてきました。

これからを生きていく子どもたちを、どのように育んでいくのか。見据えているゴールはどこなのか。安永理事長に聞きました。

※本インタビューは2020年3月に行われました。

保育園の役割は子どもを「預かる場所」から「育む場所」へ

子どもたちの様子

─今年22年目を迎えるどろんこ会グループ。共働き夫婦の増加など社会の状況も大きく変わってきましたが、安永理事長が感じる変化にはどういったものがあるのでしょうか。

安永理事長(以下、安永):どろんこ会グループの立ち上げ当初は、私自身も働く若い母親のひとりでした。

今は働き方改革やワークライフバランスの推進もあり、育休がしっかり取れたり時短勤務を選べたりするようになりましたが、22年前はそうではなかった。フルタイムで働いている場合、復職したら産前のように夜遅くまで働くことも珍しくなかったんです。だから、小さな認可外保育所だった頃は、7時から22時まで開園していました。

安永愛香理事長
どろんこ会グループの創始者である安永愛香理事長

その頃の一般的な認可・認証保育園の閉園時間は19時。そのため、特に夜遅くまで働かなければならない例えば接客業に就かれている方などは、とにかく民間の認可外保育園を選ばざるを得なかったわけです。

─その後、どういった変化を感じているのでしょうか。

安永:まず、親の働き方に幅ができ、お母さんたちの職種も多様化しました。そうした変化もあり、早朝や夜間に預ける方は確実に以前より減りましたね。昔は夕飯を園で食べる子どもはたくさんいましたが、今は一園あたり1~2人くらいでしょうか。親の「子どもと夕飯を一緒に食べたい」想いが、働き方の変化により、叶うようになったのだと思います。

また、保育園に求められるものも「預ける場所」から「育む場所」へと変化してきました。小学校に上がるまでに、マナーやルール、社会生活に関することを身に着けられる場所であってほしい。一日のうち10時間程度を過ごす場所ですから、日中働いている親に代わって子どもを育む役割をより求められるようになっていますね。

変化の背景には、保育園の飽和もあります。全国的に1歳児はまだ待機児童が生じていますが、実は各自治体が発表している待機児童数一覧には3歳児以降は「空き有り」となっています。これは東京や横浜でさえも、です。保護者の方たちが「我が子に何を経験させたいか」で園を選べるようになってきている。「とりあえず認可の保育園であればどこでもいい」のではなく、「質の高い保育・教育を受けられる保育園を選びたい」に変化してきていると思うのです。

子どもたちの様子

「にんげん力」を育む職員たちにも「にんげん力」が必要

─どろんこ会グループが育みたい「にんげん力」。これは自ら考え行動できる力ということですか?

安永:はい。自ら考え、選択し、行動できる子どもを育むためには、接する大人も自分で考え、行動できなければいけません。保護者の方も「上司が言っていることを保育士たちがただ実行しているだけの保育園」にはお子さんを預けたいとは思わないのではないでしょうか。

─自分で考え行動する力が、職員にも必要とされるわけですね。ただ、今の教育は、職員世代が受けてきた教育とは異なるかと思います。職員の「にんげん力」はどのように育んでいるのでしょうか。

安永:研修や学びの機会創出を重視しています。約10年前までは講師の先生を招いての研修をメインに行っていたんですが、受けなさい、と指示されて受ける「受け身の研修」では、本当の学びに結びつかないと気付いたんです。そこで、約7年前からは「学びたいことは、自分たちでどうしたら学べるのか考え、形にしていきましょう」と大きく方向転換を行いました。そこで始まったのが、今では年間100講座以上各地で行われるようになった「子育てスキル講座」です。

─職員たちが必要だと考える内容を講座として開き、知見をシェアできる場ですね。

安永:はい。3年くらい前からはすっかり現場主導での開催が定着しました。内容の幅も広がり、講師を経験することで職員自身の成長が見られることも。

2019年度には、「公開講座」として保護者や地域の方々など外部へ公開する機会も増えました。今後はより公開講座の数も増やしていきたいと考えています。離島など、園が地域に一つしかないような環境で働いている保育者の方のなかには、学びの場が少ないと悩んでいる方もいるんです。今はオンラインツールも充実していますから、積極的に活用していきたい。どろんこ会の職員に限らず、全国各地の幅広い業種、立場の方に学びの場を提供してゆきたいです。

職員たちによる「保育の質を上げる会議」の取組みの一部(2019年11月)
職員たちによる「保育の質を上げる会議」の取組みの一部(2019年11月)
オンライン会議の様子
オンライン会議の様子

目指す先は「子育て業界の更新」

─外部にも学びの場を提供してゆきたい理由は、何なのでしょうか。

安永:保育業界全体の底上げ、最終的には保育・子育て支援の標準を変え、制度をも変えることが私たちの目指すところだからですね。子どもを育む私たち大人が変われば、子どもたちもおのずと変わっていく。ひいては、世界をより良い方向に変えていくことにも繋がると信じています。

もちろん、自法人、自園の子どもたちのために保育の質向上を図ることは大切です。しかし、それぞれの園が異なる価値観・異なるレベルで質上げを図っても、保育業界全体の変化や更新には繋がりません。学びの場を法人外にも公開するのは、開示することで多くの人々を巻き込みたいからなんです。私たちが得た経験や知見を自分達だけで抱え込むのではなく、自らが起点となり、どんどん外にも広げて共に学び、高めあっていきたい。そんなグループになっていけたらと思っています。

─2020年現在、新型コロナウイルス感染拡大により、世界中が大きな影響を受けています。子どもたちや保護者の方との接し方、これからを生きる子どもたちに向けてのどろんこ会グループの考えについて、あらためてお聞かせください。

安永:都度行政や自治体、関係各所からの情報を得ながら法人としての方針を決め、現場と共有しています。情勢の変化もあるため、判断が難しいことも多いのですが、「これができないなら、他の方法は無いだろうか?」と常に考えるようにしていますね。

これは、保育者にも求められることでもあると思います。環境を理由に、考えることなく安易に諦めてしまうのではなく、情報を収集・精査し、選択し、できる行動を積み重ねてゆく。

三鷹どろんこ保育園で行われた地域公開子育てスキル講座(2019年5月)
三鷹どろんこ保育園(東京都三鷹市)で行われた地域公開子育てスキル講座(2019年5月)

─収集・精査・選択・行動ですか。

安永:はい。これは、今のこの状況に限らずずっと大切にしていることです。若い世代の保育者にも伝えたいことです。若い世代の人は情報収集力に長けていますから、是非その力を活かし、伸ばしてほしい。具体的には情報を収集して、それを精査し、選択し、そして行動に移す。このサイクルが身に着けば、平時・非常時を問わない対応力が養われるでしょう。

また、現状の世界・日本の情勢はネガティブなものではありますが、見方によってはチャンスと捉えられることもできるのでは、とも思っています。発想の転換、新しいアイディアを生み出せるチャンスになるかもしれない、と。

─「にんげん力」が試される機会ですね。

安永:確かに大変ではあります。けれども、そこで終わるのではなく、「じゃあ、どうしようか」と考え続けたいですね。

宮下どろんこ保育園での子育てスキル講座の様子(2019年2月)
宮下どろんこ保育園(千葉県君津市)での子育てスキル講座の様子(2019年2月)

22年目を迎え、これからが第二段階、本番へ

─今後のどろんこ会グループが目指す方向性について、お聞かせください。

安永:おかげさまで、どろんこ会グループは全国に施設を持つグループになりました。ただ、私は保育園の数を増やしたかったわけではありません。前例踏襲主義が主流であった保育業界からの脱皮、「子育て業界の更新」が当初から掲げてきた理念であり目標です。

そのゴールに向けて、現場や業界の課題を知り、どろんこ会としての仕組みを作りながら今後の子育て・保育に必要なものを明らかにしてきたのが、この20年間でした。「21年を過ぎたら、本題に入ろう」と思って取り組み続け、22年目。今からが第二段階、本番だと捉えています。

─ここからが第二段階なのですね

安永:はい。ただ、目指す先に到達するためには、職員はもちろん、別の園で働いている同業者の方たちの力が必要です。そうしてはじめて、子育て業界を新たに更新していけるのではないかと思っています。

─先ほど、情報の収集・精査・選択・行動とお話されました。安永理事長にとって、はじめの20年間は収集・精査だったのでしょうか。

安永:そうですね。ここからの10年20年が、選択し行動するターンだと思います。

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