どろんこパーソンに迫る!「保育のリアル」を知るからこそできるチーム支援。保育所等訪問支援を牽引する、ベテラン保育士の挑戦
2026.06.11
スタッフ一人ひとりの歩みや思いに迫る「どろんこパーソンに迫る!」。今回は、20年以上にわたり公立保育園で臨時保育士(会計年度職員)として勤めた後どろんこ会グループに転職し、現在は「保育所等訪問支援」事業を牽引する古川さん(保育士・児童発達支援管理責任者)に話を聞きました。

長年公立園で活躍した古川さんが、なぜ40代で転職を決意したのか。園舎を飛び出し、児童発達支援の領域で保育士の専門性をいかんなく発揮する現在までの歩みを紐解きます。全ての保育士にエールを送る、挑戦のストーリーです。
統合保育の現場で重ねた日々と、40代で下した決断
地元の私立園からキャリアをスタートした古川さんは、結婚に伴う転居を機に公立保育園の臨時保育士(会計年度職員)となりました。当時、公立園の正規職員採用には「新卒2年以内」という制限があったためです。古川さんは、雇用形態に関わらず着実に経験を積み重ねていきました。
勤務先は当時、先進的な統合保育(※1)に力を入れている自治体。そこで、時に障害のある子どもを担当する「加配保育士」として、時に正規職員と同等の責任を持つ「1人担任」として、さまざまな現場に携わります。
さらにその園は、どろんこ会グループも保育の基本活動として取り入れている「さくらさくらんぼリズム(※2)」に力を入れる園でした。経験豊かな園長たちの元で、リズム運動や発達理論を徹底的に学んだといいます。

20年以上の歳月の中で育まれた保育士としての確かな礎。充実した日々を送りながらも、我が子の大学進学という子育ての一区切りを迎え、古川さんの心にある思いが芽生えます。「正規職員として、自分の経験を次の世代につなぐチャレンジがしたい」
居心地の良い場所を飛び出し、自らの可能性を試すために。新たな挑戦の舞台として選んだのが、どろんこ会グループでした。
「ベテランが仕切る園」とは真逆のフラットな組織文化
数ある法人の中からどろんこ会を選んだのは、ホームページに並ぶ「さくらさくらんぼリズム」や「裸足保育」、「センス・オブ・ワンダー」といった言葉に惹かれたからでした。それらはまさに、古川さんがこれまで実践してきた保育理論と深く重なるものだったのです。

11年前に入職した当時の印象を、古川さんは笑いながら振り返ります。
「正直に言って驚きました。かつて在籍した公立園のような、経験豊富な園長が全てを仕切る文化とはまるで異なっていたからです。若手からベテランまで、全員が輪になって試行錯誤を重ねている――。その若々しい勢いがとても楽しかったですね」
特に新鮮だったのは、学びに対する熱量でした。各園から毎週のように「DIYを学びたい」「竹細工を習いたい」「かまど炊きを練習したい」と手が挙がり、自主的な研修が盛んに行われていました。

古川さん自身、入職3日目にして「さくらさくらんぼリズム」の研修講師を任されたといいます。勤続年数や年齢に関わらず、誰もが垣根なく自らの持ち味を認められ、発揮できる。それこそがどろんこ会グループの文化でした。
肩の力を抜いてくれた「異業種」の風
公立園時代、「正規職員に負けないようにと、どこか肩に力が入っていたのかもしれない」と振り返る古川さん。フラットな組織文化に加え、その緊張をほぐしてくれたのが多様なバックグラウンドを持つ本部スタッフの存在だったといいます。当時の本部担当者とは、互いの専門領域を教え合い、時に熱く意見を交わしながら施設マネジメントのあり方を学んでいきました。
保育の世界に閉じこもらず多様な視点を認め合う。認め合うからこそ、互いのよさが生かされる。それが古川さんの考える「インクルーシブ保育」の本質そのものでもあります。「インクルーシブは子どもだけでなく、スタッフ同士の関係においても一番大切なことだと考えています」

目まぐるしく変わるキャリア。そして「1人」から始まったプロジェクト
入職後、古川さんの歩みは目まぐるしく展開していきます。 最初に一保育士として配属された「三原どろんこ保育園(埼玉県朝霞市)」では、新卒スタッフのひたむきな姿に突き動かされて奮闘し、統括リーダーや主任にステップアップしていきました。
その後、法人初の保育と児童発達支援の「一つ屋根の下」併設施設である「ふじみ野どろんこ保育園(埼玉県ふじみ野市)」の立ち上げを施設長として主導。さらに、地域の児童発達支援の中核となる「子ども発達支援センターつむぎ 浦和美園(埼玉県さいたま市)」の施設長として地域のインクルージョンを推進してきました。
現在は専門学校の講師として、保育士科の選択ゼミ「障がい」も担当しています。ゼミでは、児童発達支援の枠にとどまらず障害そのものと向き合い、自身の「支援の軸」を見つけることを重視。これまでの確かな知見を活かし、現在は園舎の枠を超えて多方面で活躍しています。

そして4年前、古川さんの元に新たなミッションが舞い降りました。これまで外部の保育園に対して行っていた「保育所等訪問支援(※3)」のノウハウを、どろんこ会グループ内にも広げるプロジェクトです。グループ内の保育園を巡回し、現場のインクルーシブ保育をさらに強固なものにするために、新たなステージへと進んだ古川さん。現在は「発達支援つむぎ ふじみ野ルーム(埼玉県ふじみ野市)」に所属し、事業を牽引しています。

当初は古川さんの「1人プロジェクト」としてスタートした事業ですが、現在は6拠点・計10名のチーム体制へと発展。今年はさらなる充実に向け、新たな計画が進行中です。
保育事業者が「保育所等訪問支援」を行う強み
一般的な保育所等訪問支援は、児童発達支援に特化した法人が行うケースが大半です。しかし、インクルーシブ保育を実践し、保育の現場に向き合い続けてきたどろんこ会だからこそ発揮できる真価があります。
「保育園のリアルな日常や、その先にある小学校とのつながりを肌感覚で理解している人材が訪問支援に赴く。これが私たちの強みです」と古川さん。
支援の現場では、作業療法士や言語聴覚士といった発達支援の専門士(セラピスト)と保育士がチームを組みます。特定の専門領域による単一の見立てにとどまらず、生活を通した全体的な発達過程を知る保育士の視点があるからこそ、多角的に子どもの姿を理解する「チーム支援」が可能になるのです。

制度改定で認められた児童発達支援における保育士の専門性
近年、発達支援における保育士の重要性は国の制度の中でも高まっています。2021年度の制度改定では、5年以上の実務経験を持つ保育士がセラピストと並ぶ専門職として正式に位置づけられました(※4)。
また、2024年に改訂された「児童発達支援ガイドライン」では、保育所保育指針でも定められている5領域(健康・生活/運動・感覚/認知・行動/言語・コミュニケーション/人間関係・社会性)を網羅した総合的な支援が求められています(※5)。
日々の生活や遊びを通して子どもの育ちを支える保育士の役割は、ますます求められているのです。

保育士という職務について、改めて古川さんに伺いました。
「保育士の専門性とは、『生活と遊びを通した支援』であり、何より『アタッチメント(愛着形成)』を築く養護のプロであることです。セラピストと保育士の専門性が重なり合うことで、一人ひとりに合った支援が実現します。どちらか一方では足りないのです」
古川さんは、大人が良かれと思って作成した個別支援計画が、子どもの本当のニーズとずれてしまう危険性も指摘します。「子どもの眉間にしわが寄っているとき、子どもは発達しません。心から『楽しい!』と感じているときにこそ発達は促される。私たちは、その『楽しい!』を生み出すプロなのです」

保育園を飛び出し、キャリアの景色を変えてみる
古川さんに今後の目標を伺いました。 「小学校との接続の推進」「地域で孤立する家庭への支援」、そして「保育士のキャリアの多様性を発信していくこと」――。
「今後のキャリアに悩む30代やベテラン保育士の皆さんに、これまでの経験を活かして輝けるチャンスがいくらでもあることを伝えたい。私自身の歩みを通してそれを体現していくことが、これからの私の役割だと思っています」
保育士としての専門性や働き方は、決して園舎の中だけにとどまるものではありません。いま、その活躍の舞台は社会へと大きく開かれています。

「子育て」で未来を変えませんか?
新たな環境に一歩踏み出すには、不安や迷いが伴います。しかし、どろんこ会グループには一人ひとりが思い描く保育を仲間と共に試行錯誤しながら形にしていける環境があります。
私たちと一緒に働きませんか。これまでの経験を生かし、新たな保育に挑戦する皆さんをお待ちしています。
保育所等訪問支援を実施している発達支援つむぎ
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注釈
(※1)統合保育:既存の枠組みの中に障害のある子どもを受け入れる保育。対してインクルーシブ保育は、子どもの多様性を前提に環境や保育そのもののあり方を変えていく。
(※2)さくらさくらんぼリズム:「さくら・さくらんぼ保育園」創始者の斎藤公子氏が考案した脳と体の発達を促すリズム運動。
(※3)保育所等訪問支援:児童福祉法に基づく障害児通所支援の一つ。障害や発達に気がかりのある子どもが地域の中で安心して過ごせる環境をつくるために、専門スタッフが保育所や幼稚園、学校などを直接訪問して支援するサービス。







