どろんこ会の保育所等訪問支援とは?障害の有無で育つ・学ぶ場を分けないためのインクルーシブな発達支援

2023.06.22

#発達支援

全施設

保育所等訪問支援は、障害や発達に気がかりのある子どもが別の場で支援を受けるのではなく、身近な地域の中で共に学び、遊び、育っていくインクルージョンを推進するために、2012年4月の「児童福祉法」改正により創設された制度です。 障害児通所支援の一つとして、児童発達支援の専門スタッフが幼稚園や保育園、認定こども園、学校等に訪問し、集団生活に加わりながら、子ども本人への支援を行い、該当施設のスタッフと一緒に支援方法も考えます。

制度創設から10年が経ち、厚生労働省は2022年から2023年にかけて「障害児通所支援に関する検討会」を開催。検討会の報告書には、障害のある子どもたちのより一層の地域社会への参加・包摂(インクルージョン)を推進するため、保育所等訪問支援の効果的な活用が盛り込まれました。

土手に寝転ぶ子どもたち
どろんこ会グループのインクルーシブ保育の実践を保育所等訪問支援に生かします。

現在、どろんこ会グループでは、子ども発達支援センターつむぎ 浦和美園(埼玉県さいたま市、以下:つむぎ 浦和美園)、つむぎ ふじみ野ルーム(埼玉県ふじみ野市)、つむぎ 生田ルーム(神奈川県川崎市)にて保育所等訪問支援を行っています。2023年7月に開所予定のつむぎ 田無ルーム(東京都西東京市)、2024年4月開所予定の子ども発達支援センターつむぎ 東大和(東京都東大和市)でも実施予定です。

今回、つむぎ 浦和美園で保育所等訪問支援を担当する橋本施設長と訪問支援員の野崎さん、宇津野さんにどのような支援を行っているのか話を聞きました。

訪問先のスタッフや先生方との情報共有、一緒に支援方法を考えることが大切

—保育所等訪問支援の利用の流れを教えてください。

橋本施設長:つむぎ 浦和美園をご利用していても保育所等訪問支援のことをご存じない保護者も多く、所属園や学校での様子をお聞きする中で訪問支援サービスがあることをご案内するようにしています。「ぜひ園に訪問してほしい」と保護者の方がご希望された場合は、所属園や学校には保護者の方から訪問支援サービスを利用したい旨をお伝えいただいた後に、つむぎの訪問支援員がやり取りを始めます。

つむぎ浦和美園の3名の訪問支援員
訪問支援員の野崎さん(左)・宇津野さん(中央)・橋本施設長(右)

—どのような支援を行っているのですか。

橋本施設長:現在、つむぎ浦和美園では、保育園・幼稚園児と小学校1年から3年生の児童が利用しています。保育園や幼稚園の場合は、訪問支援員が朝の登園から活動の始まり、集団活動、友達関係、着替え、給食など、保護者のニーズに沿った時間帯に訪問して様子を見ます。小学校も同様に授業中の様子、先生や友達との関わり、給食の様子などを見ています。実際の集団生活の中で本人が困っていることを分析して、先生方と情報共有し、支援方法を一緒に考えたり、提案したりしています。

月の訪問回数は通所受給者証によって決められていて、ほとんどが月1回か2回となっています。利用児童の様子や訪問先の状況によって違いはありますが、毎月1回、または2、3カ月に1回の頻度で訪問支援を行っています。

保護者との面談の様子
訪問時の様子などを丁寧に報告する野崎さんと宇津野さん

—支援を行うにあたって心がけていることはありますか。

野崎さん:一番は訪問先との関係性づくりです。保育や授業中の様子を第三者が見に来ることに先生方が抵抗を感じるのは当然のことで、最初は「何をしにきたのかな?」と警戒される先生もいます。まずは、先生方の言葉がけや関わり方で良いと思った点や支援員側の気づきになった点などをお伝えしながら相談相手としての信頼関係を築き、より良い支援方法を共に考え、提案するようにしています。

ある園では、何回か訪問するうちに、担任の先生が遊びの際の言葉がけや環境設定などを工夫することを意識してくださったり、運動会予行練習のサポートを依頼されたりするようになりました。大人の関わり方が変わると、周りの子どもたちにも伝わり、子ども同士の関わりも変わっていくんです。訪問支援の利用児童を直接支援するだけではなく、その子がいる環境を考え、見直すことが、保育所等訪問支援で大事なことだと思っています。

訪問支援員同士の密な情報共有
訪問支援員同士の密な情報共有も欠かせない

—保育所等訪問支援を続ける中で嬉しかったエピソードはありますか?

橋本施設長:最初は一人の利用児のために訪問していた園の先生方が、他のクラスでもつむぎを紹介してくださるようになりました。園に通いながら、つむぎも利用してもらい、「一緒に支援していきましょう」となったのです。つむぎでの支援の成果が見えると、所属園で過ごす時間も増えていくため、移行支援にもなります。その一役を保育所等訪問支援が担っていると実感しました。

見つけた虫を捕まえる子どもたち
大人の関わり方が変わることで、集団の中での子ども同士の関わりも変わっていく

全ての子どもが地域の中で共に遊び、学び、育ち合うために

橋本施設長と野崎さん、宇津野さんは、保育所等訪問支援を知らない保護者が多いことから「子どもが暮らす地域、集団の中で支援を行うサービス」であることをもっと広めたいと話します。

「障害児支援の見直しに関する検討会報告書」(2008年)では、障害のある子どもの地域社会への参加・包摂(インクルージョン)を推進するためには、以下のことが必要であると述べています。

保育所等においては障害のある子どもの受入れを促進していくこと

障害児通園施設等に通っていた子どもが円滑に保育所等に通えるようにすること

保育所等訪問支援は保育園だけでなく、幼稚園や認定こども園、小学校、学童保育、特別支援学校、乳児院、児童養護施設、自治体が認めた児童が集団生活を営む施設などが対象になります。発達支援つむぎは、全ての子どもが地域の中で共に遊び、学び、育ち合えるよう保育所等訪問支援にも力を入れてまいります。

保育所等訪問支援のご利用の流れについては、こちらのページをご覧ください。

保育所等訪問支援について

保育所等訪問支援を実施している発達支援つむぎ

子ども発達支援センターつむぎ 浦和美園

発達支援つむぎ ふじみ野ルーム

発達支援つむぎ 生田ルーム

実施予定の事業所

(仮称)発達支援つむぎ 田無ルーム(2023年7月開所予定)

(仮称)子ども発達支援センターつむぎ 東大和(2024年4月開所予定)

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保育所等訪問支援の効果的な実施を 図るための手引書(厚生労働省HP)

障害児通所支援に関する検討会 報告書(厚生労働省HP)

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