「自分にできること」を考え、行動する背中を見せたい。香取台どろんこ保育園保育士のヘアドネーション

2025.08.28

#保育

発達支援つむぎ 香取台ルーム 香取台どろんこ保育園

どろんこ会グループの施設では、毎年決まった行事をこなすのではなく、全スタッフが子どもにつけたい力は何か、そのために必要な経験は何かを毎年真剣に考え、行事を提案、決定しています。

今回はスタッフの発案で、子どもたちがヘアドネーションについて知る機会を設けた香取台どろんこ保育園と発達支援つむぎ 香取台ルーム(茨城県つくば市)の活動をお伝えします。

親友ががんに 自分にできることとは

ヘア(髪の毛)ドネーション(プレゼント)とは、18歳以下のウィッグを必要としている子どもたちにプレゼントする活動です。一つのウィッグを作るのに31センチ以上の髪の毛が30人分必要になります。

今回、美容師の方を施設にお招きして、実際に子どもたちに自分の髪を切ってもらおうと計画したのは、香取台どろんこ保育園で主任を務める入田さんです。

入田さんが子どもたちにヘアドネーションについて知ってもらいたいと思った背景を聞いてみました。

香取台どろんこ保育園の入田さん
香取台どろんこ保育園の入田さん

「高校時代からの親友がスキルス胃がんにかかり、病状の悪化に伴い髪の毛だけでなくまつげやまゆげも抜けていくのを目の当たりにしました。辛かったと思うのですが、いろいろなウィッグを選べるのが楽しいと話してくれました。ただ、値段が高いのが悩みだと。

親友が亡くなったあと、私に何かできることはなかったのかを考えるようになり、ヘアドネーションについて調べてみました。健康できれいな髪でないと寄付はできないだろうと思っていたのですが、白髪染めをしていても、パーマをかけていても大丈夫ということを知り、ずっと短かった髪を5年前から伸ばし始めました。

保育士という仕事をしているからには、子どもたちにも伝えたいし、共に働く仲間にも知ってもらいたいと考えました。そこで園で実際に自分の髪を子どもたちに切ってもらおうと思いつきました」

園児が実際に散髪 ヘアドネーションの意味を学ぶ

企画について園で話したところ、スタッフの知り合いの美容師の方とつながることができました。その美容師の方もヘアドネーションに興味があるとのことで、いろいろ調べてくださり、子どもたちに説明できるようスケッチブックで資料も作ってきてくださいました。

美容師の方もヘアドネーションについて学びながら説明してくださいました
美容師の方もヘアドネーションについて学び、子どもたちに伝えてくださいました

参加したのは園とつむぎに通う5歳児です。子どもたちの中には、ヘアドネーションについて、髪を伸ばして切ると知っている子もいました。

ただ、病気や事故などのせいで髪を失ってしまうことや、切った髪がどのように使われるのかまでは知らなかったようで、美容師の方の説明に真剣に耳を傾けていました。

話を聞いた後、いよいよ一人ずつ、入田さんの髪の毛にはさみを入れます。

真剣な表情ではさみを入れます
真剣な表情ではさみを入れます

「子どもたちはもっと喜んで切るのかなと想像していたのですが、『本当に切っていいの?』と恐れや緊張が見られました。敬意をもって私の髪を切ってくれたことに驚きました。とても真剣に、丁寧に切ってくれました。私は自分の髪がいよいよ役に立つんだとわくわくしていたのですが、子どもたちの様子を見て厳かな気持ちになりました」と、想像とは違った子どもたちの姿に驚いた入田さん。

緊張しながらも慎重に切ります
緊張しながら慎重に切ります

いざ切り終えると子どもたちもはしゃいでいましたが、「ありがとうございました」という言葉が聞かれたことも印象に残ったと言います。

「たまにいたずらで自分の髪を切ってしまう子もいるかもしれませんが、髪がこれほど大事だということに気づくことができたと思います。この体験を通じて、病気やケガ、薬の副作用などで髪の毛を失う子どもたちがいることやヘアドネーションという活動があることを知るきっかけになればいいなと思います。美容師の方にとっても初めての経験だったと聞き、いろいろな人の貴重な機会となりうれしかったです」と振り返りました。

インクルーシブ保育の実践者としての思いをもって

入田さんはこの活動をより多くの人に知ってもらおうと、どろんこ会グループのウェブ社内報『創園』でもレポートしました。すると、全国各地のスタッフから共感の声が上がりました。スタッフの感想を一部をご紹介します。

・そのような機会を保育園時代につくれるのは素晴らしいことですね!!

・素敵な企画ですね。保育園に勤務し始め、私も2回ヘアドネーションを経験しました。短くなった髪に子どもだけでなく、保護者の方にも驚かれました。切った理由を聞かれ「ヘアドネーション」と伝えると、保護者からも子どもと一緒にやってみたいと実際に経験してくださるご家庭もいました。「保育園でやってみるのもありだったのかぁ!」と、その発想力に拍手です!

入田さんは30年間、保育園、幼稚園、こども園、乳児院で働いたのち、インクルーシブ保育を実践するどろんこ会への転職を決めました。「障害のある子を分けるのではなく一緒に生活し、いろいろな子がいるのが当たり前の環境で育つことが大事なのだ」と気づいたからだと言います。

「子どもたちには、どんな時でもどんな人にも特別扱いすることなく、分け隔てなく接してほしいと願っています。今回のヘアドネーションも決して特別なことをしたのではなく、自分にできることはなんだろうと当たり前のように行動しただけであり、その結果がいろいろな人に伝わるとよいと思っています」と最後に語りました。

施設情報

香取台どろんこ保育園

発達支援つむぎ 香取台ルーム

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