保育・農業・インクルーシブの実践を社会の力に~2026年度、どろんこ会グループが挑むこと
2026.04.02
2026年度がスタートしました。保育・児童発達支援を軸に、農業や地域との連携など多様な取り組みを広げてきたどろんこ会グループ。昨年度の歩みを振り返るとともに、2026年度に向けた意気込みを安永理事長と高堀代表に聞きました。

安永:どろんこ会グループでは、畑仕事や長距離散歩、ヤギや鶏の世話など子どもの「生きる力」を育む基本活動を大切にしています。しかし、日々の日課を行う中でそれらが当たり前になってしまうこともあります。そこで改めて、「なぜこの活動を行うのか」「どうやるのか」を見つめ直し、保育環境を整える一年としました。

安永:象徴的な取り組みの一つが「屋外の物的環境構成」の見直しです。これは、園庭に水や土、木などの自然素材を計画的に配置することで子どもたちが自ら活動を選び、遊びを生み出し、発展させていく環境を整えるというものです。

安永:どのような素材をどこにどれだけの量置くのか。スタッフはどのようにして子どもが主体的に遊ぶ力・考える力を伸ばすのか。「私たちは教育のプロとして、創意工夫につながる材料を配置し、創造のプロセスを見る目を持つ」というテーマを全国の施設長に投げ掛けました。
すると、確かな変化が生まれました。ある園を訪れたところ、園庭の中に同時に4つの遊びのコーナーが生まれ、子どもたちがそれぞれの活動を主体的に選び、夢中になって取り組んでいるのです。
家づくりをする子ども、布に絵を描く子ども、火を起こす子ども——そこには大人の強制では決して生まれない、子どもたちの豊かで創造的な世界が広がっていました。

安永:スタッフが悩み、考え抜いて整えた環境があったからこそ生まれた活動です。そして、実際に生まれた世界は大人の想定を超えるものだった。それこそが保育の醍醐味だと感じています。
食育の新しい挑戦 「新どろんこレシピ」始動
─食育の分野でも新たな挑戦が始まりました。安永:どろんこ会では約10年前に食育の実践をまとめた『どろんこ保育園の食育計画』を出版しましたが、この間、食を取り巻く環境課題は大きく変化しました。そこで今回は「食材を余すところなく使い切る日本一の給食献立」をテーマに、次代の新たな昼食・おやつ開発を進めています。
野菜の皮や出汁がらの活用、皮をむかない調理法の工夫、さらには卵の殻や果物の皮の堆肥利用など、調理くずを極限まで減らすアイデアを集め、新しいレシピ集としてまとめる予定です。

安永:プロジェクトの過程では給食調理の技術と発想を競う「給食の鉄人®」コンテストにも出場し、全国約400応募の中から八山田どろんこ保育園(福島県郡山市)が見事優勝を果たしました。
どろんこ会グループでは、調理スタッフも毎日縁側で子どもと一緒に給食を食べています。そうした日々の関わりや畑仕事から着想を得るなど、どろんこ会グループの食育が結集した一品でした。入社4年目の調理スタッフが自ら手を挙げて挑戦したことも大きな喜びでしたね。

官民連携でインクルーシブ保育の取り組みを全国へ
—インクルーシブ保育の分野では自治体との連携が進みました。安永:福岡県小郡市、山形県上山市と連携協定を結び、どろんこ会グループが培ってきた実践を自治体へ共有する取り組みが始まっています。自治体職員が民間園に長期派遣されて実践を学ぶという全国的にも珍しい試みです。

安永:インクルーシブ保育の理念と実践をまとめた書籍『子どもも大人も混ざり合う 児童発達支援×保育所等の併設で創るインクルーシブ保育』も出版され、完全併設型施設による取り組みは海外メディアでも紹介されました。
私たちは決して特別なことをしているのではありません。ただ、目の前の子どもにとって必要だと思うことを地道に続けてきました。私や高堀はいつでも理想形を追い求めるけれど、現場で実践することは容易ではありません。スタッフが汗や涙を流しながら積み重ねてきた取り組みが、国内外から注目される形になっています。
幼児教育の先進国は世界にあるけれど、「0歳からの人育て」として養護と教育を一体的に行う日本の保育は、世界のトップクラスだと思っています。

施設長が理事に就任し、新たなキャリアモデルが誕生
─国内の施設数は全国約190か所にまで広がりました。高堀:「地元に戻って保育をしたい」というスタッフの声をきっかけに、グループ初となる大阪と栃木に開設が決まったことはうれしかったですね。

高堀:また、沖縄県では初めて他の社会福祉法人の運営を引き継ぐこととなり社会福祉法人愛育会が新たにどろんこ会グループの一員となりました。守谷どろんこ保育園の前施設長が同法人の理事に就任し、保育面はもちろんのこと、経営全般に手腕を発揮してもらっています。新たな環境、挑戦の場を通じて自己成長につなげてほしいと考えています。

高堀:新潟県柏崎市で農地を拡大したことで、毎年新規施設が増えても、減農薬で栽培した給食米をグループ全施設に供給できる体制が整いました。地域の協力を得ながらDoronko Agriの農地も一気に拡大し、減農薬・有機栽培の給食野菜の生産量も順調に増えています。

高堀:2025年度の大きな成果は、これらの農産物を各施設へ届ける流通の仕組みを整えたことです。どろんこ会グループの給食を支えてくださっている尾島商店様の発注・配送システムを活用できるようになったことが大きな転機でした。
一見すると地味な取り組みかもしれません。しかし、作った野菜を届けられなければ意味がない。また、利益を出す仕組みがなければ持続可能な農業は成り立ちません。こうした基盤を整備できたことは大きな前進でした。
─障害のあるアーティストの社会参加を広げる「パラリンアートカップ」のメインスポンサーも2年目を迎えました。
高堀:昨年度、スポンサー賞として新たに「中・高校生部門」と「パイオニア(初応募)部門」を設置しました。入賞作品をオリジナルコーヒーブランド「Do coffee」のラベルに採用し、利用料をアーティストに還元する仕組みも整えています。今年度もメインスポンサーとして、どろんこ会グループならではの取り組みを展開していきます。
「教育」の質を高める一年に
─2026年度、保育分野ではどのような取り組みに力を入れますか。安永:直近の保育所保育指針の改訂(2017年)により、保育園が教育を行う施設であることが明示されました。私たちはプロの教育者として、就学前の子どもにとって特に重要な力である「協働性」「社会性」「規範意識」「善悪の判断」の4つを重点的に育みます。

安永:スタッフ一人ひとりがそれぞれの言葉の意味を理解し、日常の保育の中で指導できる存在でなければなりません。まずは私たち自身の意識改革を土台に、教育の質を高める一年にします。
また、2026年度は「Doronko環境目標(2021–2026)」で掲げた給食残渣50%削減の達成イヤーでもあります。目標値まであと僅か。全施設が協力し、必ず達成します。

安永:20年以上前から乳幼児期の性教育に取り組み、約10年前には保育品質マニュアルの中で虐待の定義や防止策、性暴力が疑われる場合の対応フローなどを整備してきました。こども家庭庁との連携も進めており、私たちの実践がその一助になることを期待されているとも感じています。

高堀:各地域の保育・子育てを牽引する役割を担うため、経験を積んできた方を対象に、どろんこ会グループの理念に共感し志を共にする施設長候補を全国で募集します。
そして、引き続き他法人の引き継ぎや事業承継などについても真摯に検討していきたいと考えています。施設長のキャリアの先に、法人経営という新たな挑戦の場がある—そのようなロールモデルを創出します。

高堀:2024年度のインタビューでも伝えた南魚沼市のジビエ解体加工施設とクラフトビール醸造所が、いよいよオープンします。食育と地域の課題解決を兼ね備えた一大施設です。南魚沼市と連携し、確実に地域活性化の拠点となるよう展開していきます。

安永:どろんこ会グループはこれまで、「走りながら考えて、やってみて、失敗する」という挑戦を繰り返してきました。余計に見えることが、実は必要なことだったりします。その積み重ねこそが私たちの財産です。
高堀:いま、保育業界は大きな転換期を迎えています。だからこそ、私たちが積み重ねてきた実践を社会と共有し、日本全体の保育の力につなげていきたい。子どもたちの未来のために、どろんこ会グループは2026年も全力で挑戦を続けてまいります。

※本インタビューは2026年2月に実施しました。
これまでの代表インタビュー
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