Doronko Agriの挑戦ー第2回現場編「減農薬栽培の畑と食育の現場に学ぶ、安心給食のつくり方」全3回

2025.10.30

#農業

全施設 食育

前回に続き、安全な給食野菜の自給自足と、農業を通じた循環型社会の実現を目指す株式会社Doronko Agri(どろんこアグリ)の取り組みをご紹介します。今回は、保育園で活躍する食育プランナーや野菜づくりに携わる作り手の思いを現地からリポートします。

Doronko Agriの挑戦ー第1回創業編「保育園給食に安心・安全を届ける農業エコシステムを」全3回

食材にも多様な価値観があることを伝えたい

実際に園では、Doronko Agriの野菜はどのように使われているのでしょうか。船橋どろんこ保育園(千葉県船橋市)の管理栄養士で食育プランナー※1の澤本さんに話を伺いました。

※1 法人全体の食や調理の質の向上を目指し、担当エリア内の保育園で給食業務や食育が適切に行われるようサポートするどろんこ会独自の職

園で子どもと触れ合う澤本さん
栄養管理士で食育プランナーの澤本さん

ーDoronko Agriの野菜について、感想を教えてください

澤本:減農薬でトレーサビリティが確保されているという安心感がありますが、何より野菜の味が濃く、本当においしいです。季節によっては少し小ぶりだったり虫食いが見られたりすることもありますが、その分味わいはしっかりしています。

どろんこ会ではもともと、野菜そのものの味を感じてもらうことを大切にしたレシピにこだわっています。その点でも私たちの給食にぴったりな食材だと思いますね。

保育園の給食シーン
給食は、どろんこ会の食育を支える大切な時間

ー子どもたちの反応はいかがですか?

澤本:子どもの味覚は大人の3倍とも言われるほど敏感なことに加え、良くも悪くもとても正直なので、給食の時間にはこちらが聞かなくとも毎日たくさんの感想を伝えてくれます。

Doronko Agriの野菜を食べた時は「今日のにんじん、いつもよりあまいね」と教えてくれたり、「この野菜どこで買ってきたの?」と聞いてくれたり。特に野菜の味は子どもにも分かりやすいようで、Doronko Agriのおいしさはしっかり伝わっていると感じますね。

どろんこアグリの野菜を見比べる子どもたちと澤本さん
Doronko Agriの野菜は子どもたちにも人気

ーレシピ開発に生かしていることはありますか?

澤本:レシピチームでは、できるだけ薄味で食材のうま味や特徴を感じられるレシピ開発を重視しています。旬の味を楽しむためにもDoronko Agriとの連携が大切です。野菜の品種や収穫量について事前に連絡をいただけるので、柔軟に献立に取り入れています。

どろんこ会の秋の給食例
旬を生かしたこだわりの給食レシピ(秋かぶの味噌汁)

澤本:3カ月先まで見越してレシピを作成しているため、急な変更は手間がかかることもありますが、それ以上に「安全でおいしい野菜をどう生かすか」を考えることが私たちにとって楽しみであり、腕の見せ所になっています。

調理室で職員が給食を調理する様子
調理室

ー食育に関する計画があれば教えてください

澤本:Doronko Agriの野菜を子どもたちと一緒に味わい、食べ比べたり考えたりする機会をつくりたいですね。減農薬や有機栽培の良し悪しを教えるのではなく、「小さくてもちょっと虫食いがあっても、この野菜おいしいね」と子どもたち自身が実感できる場にしたい。

農薬使用の有無に関わらず、さまざまな理由で野菜が捨てられてしまう現実があります。だからこそ、見た目に関係なくおいしい野菜があることを含め、食材にもさまざまな価値観があることが伝わるといいなと思っています。

籠にたくさん入ったどろんこアグリのジャガイモ
収穫したDoronko Agriのジャガイモ

土や生態系の力を最大限に生かした減農薬栽培に挑戦

続いて、日高どろんこ保育園(埼玉県日高市)のすぐ隣にある日高圃場を訪れました。

遮るもののない空の下、広々と広がるDoronko Agriの畑。栽培している野菜はニンジン、タマネギ、ジャガイモなど全6種で、訪れた時期はちょうどカボチャやサツマイモが育ち始めている季節でした。

日高どろんこ保育園のすぐ隣にある畑
日高どろんこ保育園のすぐ隣にある日高圃場

「減農薬野菜」と銘打つDoronko Agriですが、露地野菜の生産過程においては農薬を一切使用していません。無農薬野菜の認証には、土壌に蓄積した農薬や空中飛散の有無など厳格な認証プロセスが必要です。

制度に基づき「減農薬」という表現を用いていますが、畑では農薬を一切使用しないことにこだわっています。しかし、この選択は一筋縄にはいきません。

日高圃場で野菜作りにあたる新井さんに話を伺いました。

畑の前でこちらを向く新井さん
日高圃場の新井さん

ー農薬を使わない野菜作りには、どのような苦労があるのでしょうか

新井:品質と収穫量を両立させることが最大の難関です。特に除草作業と病気対策に苦戦しており、毎日が挑戦の連続ですね。自然相手の農業ですから、初めはすべて出たとこ勝負。出来上がった作物を見て毎年栽培方法を改良しています。

ー例えばどのような栽培を行っていますか?

新井:虫よけや病気対策として木酢液を活用したり、イモ類が水分に弱い特性を考慮して、平らな畝を山型に変更し水はけをよくしてみたり。

山形の畝が整うサツマイモ畑
山型の畝が整うサツマイモ畑

新井:昨年からカボチャは空中栽培に変更しました。風通しが良くなることで腐りにくく、病気が蔓延しにくいメリットがあります。また、空中に蔓を伸ばすことで雄花と雌花が明確になり、蜂による受粉を促すこともできます。

空中栽培しているカボチャの実
カボチャの空中栽培

ーそのようにしてできたDoronko Agriの野菜は、子どもたちから「おいしい」と好評です

新井:子どもに喜んでもらえることが最大の喜びですね。畑はすぐ隣にある日高どろんこ保育園の散歩コースにもなっており、子どもたちの姿を身近に感じられるので気が引き締まります。

大きく育った野菜を見て「りっぱだね!」と声を上げてくれた時は本当に嬉しかったですね。子どもたちの声を励みに、これからも頑張ります。

畑の横を散歩する子どもたち
畑は子どもたちの散歩コース

最終回となる次回は、再び高堀代表が登場。Doronko Agriが描く未来像に迫ります。

連載記事

Doronko Agriの挑戦ー第1回創業編「保育園給食に安心・安全を届ける農業エコシステムを」全3回

Doronko Agriの挑戦ー第3回未来編「人・食・仕事がつながる循環型社会の実現へ」全3回

施設情報

船橋どろんこ保育園

日高どろんこ保育園

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