性教育は「生」教育。自分の体と命を守るために伝えたいこと-後編

2019.03.20

#保育

清瀬どろんこ保育園

清瀬どろんこ保育園(東京都清瀬市)で行われた性教育について、前編では、幼児期に行う性教育の意義や自分たちの体について学ぶ子どもたちの様子を紹介しました。後編では、第二回の性教育「命の誕生」について、子どもたちが話し合う様子や同園の山田園長の性教育ついての想いをお伝えします。

「性教育は『生』教育。自分の体と命を守るために伝えたいこと-前編」はこちら

性教育第二回 大きくなった喜び「命の誕生」について知る

二回目の性教育は、まず一回目のおさらいから。山田園長が「どんなお話だったかな?」と聞くと、みんな、プライベートゾーンのこと、自分の命は自分で守ることをしっかり覚えていました。そして、山田園長の「おかあさん」という絵本の読み聞かせからはじまりました。

性教育のための絵本を読む山田園長
絵本を使って「命の誕生」を知る

読み終えたあと、「みんなのはじまりは何だった?」と質問すると、「お父さんの種とお母さんの卵!」と子どもたちは元気に回答していました。

命のはじまりを知る
黒い紙に針で穴をあけます

「じゃあ、はじまりの大きさを見てみよう」と山田園長が取り出したのは、黒い紙と針。卵子の大きさを知るため、子どもたちと一緒に針で穴をあけました。これは卵子の大きさです。小さな光を覗くようにして見る子どもたちに、山田園長は「みんな、こんなに小さかったんだね。この紙を持って帰って、お母さんやお父さんにも見せて話してあげてね」と伝えました。

命のはじまりを知る
命のはじまりの大きさを確かめ合う子どもたち

次に、「こんなに小さかった卵から、どんな風に大きくなっていったんだろうね」と山田園長が問いかけながら取り出したのは、「ももちゃん人形」です。

ももちゃん人形を紹介する山田園長
ももちゃん人形でお腹の中で赤ちゃんが育つ様子を知る

ももちゃん人形は、1ヶ月から10ヶ月まで、実際の胎児のサイズ・重さを模した人形です。10ヶ月のももちゃんには胎盤もついています。「やさしくしてあげてね。触ったり抱っこしたりしていいよ」と山田園長が声をかけると、子どもたちが集まり、ももちゃん人形の頭に手を添えて、そっと抱っこ。

ももちゃん人形を抱っこする園児
「重たいね」「足、小さいね」と様々な感想が聞こえてきました
ももちゃん人形で遊ぶ園児
小さな人形を優しく持って、一つ一つ比べてみる子どもたち

抱っこをし終わったあとに子どもたちに感想を聞くと、「重たかった!」の声が続々と上がりました。「そうだよねえ。お母さんお父さんはみんなが生まれたあとも、こんなに重い赤ちゃんをいっぱい抱っこしていたんだよ」と伝える山田園長。

「ここで、ちょっと難しいかもしれないけれど、みんなに読みたい本があります」。そう言って山田園長が見せたのは、「赤ちゃんの誕生」という本です。これは絵本ではなく、おなかの中にいる赤ちゃんの成長の様子をカラー写真で伝える本。医学用語が多く使われている大人向けのものでした。

胎児の本を読み聞かせる山田園長
お腹の中の赤ちゃんの写真はとても神秘的でした

胎児が小さな細胞からだんだん赤ちゃんの形になっていく様子を、吸い寄せられるようにじっと見入る子どもたち。難しい言葉が次から次へと続きますが、「生命誕生」「命の尊さ」を子どもたちなりに受け止めている様子でした。

家族からの誕生にまつわるメッセージ

性教育に参加する保護者
性教育には保護者の方も参加

最後は、この日の性教育に参加したお母さんたちからの妊娠・出産についてのお話でした。「6番目の子だったこともあり、病院に行って19分の超スピードで生まれてきた」「大きな病院に入院していたため、研修医や看護師に見守られながらのお産になった」ことを話してくれました。子どもたちは友達の生まれたときの話を聞くことに興味津々です。

また、参加できなかった保護者の方からも手書きのメッセージをいただき、山田園長が読み上げていきました。

お母さんたちからのメッセージを読む山田園長
保護者の方々からのメッセージを読む山田園長

全然泣かずにすやすや寝てくれた赤ちゃんだったという話、着床した瞬間がわかったという話、出産までに34時間かかった話、前置胎盤で切迫早産になったという話など、様々なエピソードが語られました。子どもたちは自分が生まれた時のエピソードを、目をキラキラと輝かせたり、少しはにかんだりしながら聞いていました。

5歳児の性教育は「生死を知る」保育の集大成

清瀬どろんこ保育園の山田園長
清瀬どろんこ保育園の山田園長

山田園長は、「性教育は『生』教育なんです」と語ります。主役は「性」ではなく「生」。あくまでも、「自分は大切なひとつの命なんだ」ということを伝えるのが主題だと言います。

もともとどろんこ会グループでは、「生死を知る」ことを保育方針のひとつに掲げています。子どもたちは、野菜の栽培や収穫、ヤギやニワトリの飼育や魚の解体など日々の保育の中で、命の大切さについて学んでいます。「5歳児への性教育は、こうした命の大切さを知る教育の集大成です。そのため、大げさな特別意識はないんですよ」と山田園長。

「たとえ難しい言葉はわからなくても話はちゃんと聞いているんですよね。私の話や読んだ本などをきっかけに医療分野に興味関心を持つ子がいるかもしれないし、将来医師や看護師を目指そうと思う子が出てくるかもしれません。性教育は、命の大切さを伝えるのと同時に、子どもたちの興味関心の種まきでもあるんですよ」。

自分や周囲の人の体、命を大切に思える大人になって欲しい

子どもへ性教育を行なう際、大切なのは保護者への丁寧な説明です。性教育を取り入れはじめた当初は、懸念や疑問の声も寄せられていました。しかし、あくまでも「生」が主軸であることや、自分の命がかけがえのないものだと伝えることが目的だと丁寧に説明していくうちに、「ぜひやってください」と言われることが増えていきました。

どろんこ保育園の性教育

ただ、いくら意義のあるものであるとはいえ、子どもの参加は強制ではありません。清瀬どろんこ保育園では、11月頃に取り組みの告知をし、開催ギリギリまで参加・不参加の返答を待つ時間を設けています。家庭として参加しないことに決めれば、受けない選択肢もあるのです。

しかし、丁寧に説明をしたあとには、「やっぱり参加させます」となるケースがほぼ100%。保育園が子どもたちへの性教育を実施することで、保護者にとっても家庭で話をするきっかけになっているようです。

自分の命や体が大切に感じられるようになることで、友達のことも大切にできるようになるでしょう。友達もまた、誰かの大切な人なんです。人を大切にすることを覚え、ものも大切に扱える、そんな子に育って欲しいですね」と、語る山田園長。

保育園で過ごす最後の年に、生死の学びの集大成として行なうどろんこ会グループの性教育。赤ちゃんはどうやってできて、どうやって生まれてくるのか。自分自身はどうやって生まれてきたのか。今回の性教育を終え、体と命を大切に考えられる大人になるためのとても大きな第一歩を、子どもたちは踏み出したことでしょう。

関連リンク

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