【乳幼児期に育む「6つの力」を考える】科学遊び編

2021.09.02

#保育

浦安どろんこ保育園

どろんこ会グループには「6つの力」と呼んでいるものがあり、それぞれの力を育むための基本活動が26あります。

どろんこ会グループ独自の表現もありますが、「6つの力」も「基本活動」も、2018年4月1日から施行された新「保育所保育指針」に明示された「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」に基づいているもの。

今回は、浦安どろんこ保育園(千葉県浦安市)が5年にわたり取り組んでいる「科学遊び」を通じ、「感じたこと、考えたことを表現する」について考えたいと思います。

どろんこ会グループ「6つの力」
どろんこ会グループ「6つの力」

「6つの力:活動を選択し、自分で考えて行動する力」の詳細はこちら

「科学遊び」とは、科学実験を取り入れた遊びを指します。子どもたちと科学遊びをすることで、日常に起こりうる様々な科学的事象に気が付き探究する力を育むことを目的としています。

浦安どろんこ保育園では、科学遊びと出会った一人の職員の発案から始まりました。当初は一人担当者を決めて計画を立てていましたが、今年度からは科学遊びをさらに発展させるべく、職員全員で取り組むことになりました。

子どもたちと予想しながら楽しむ「水に浮く野菜」

この日は水にまつわる科学遊びで、最初は「浮く」がテーマ。

まずは身近なものということで、食器、野菜、果物を用意しました。

そして浮き沈みの例として、木のおわんと陶器のお茶わんを水の中に入れて見せます。すると、子どもたちはすぐさま「大きくなった!」と大喜び。水に入れた物体が大きく映る様に気が付き指摘したのです。

気が付いたことをどんどん発言する子どもたち
気が付いたことをどんどん発言する子どもたち

その後、野菜をひとつずつ、浮くか沈むか子どもたちに予想を聞きながら水の中に入れてみました。「浮いた!」「沈んだ!」と、実験結果に喜んでいると思えば「とうもろこしは長いからひっかかって浮いているんじゃない?」「皮をむいたら沈むかも」と、自分たちの考えを言葉にしていきました。

皮をむいて水の中に入れたとうもろこし
とうもろこしと玉ねぎは皮をむいて再度水の中に入れてみました

重たいから沈む、丸いから浮く、それならスイカは入れたらどうなるのか。子どもたちの疑問や考察が次々と飛び交いました。終わった後も「帰ったらお姉ちゃんに教えてあげよう」と楽しそうな様子でした。

描いた絵が消えて見える「水中絵」

次に行ったのは「水中絵」です。

こちらは、絵を描いたポリ袋の中に絵を描いた紙を入れて水に入れると、光の屈折で紙に描いた絵のみが消えて見えるという実験です。

水の中に入れた絵が消える様子
水に入れると、紙に描いたくまの絵が消えます

子どもたちは夢中になって水の中に絵を出し入れしていました。うまく見えない子には「上からの方が見やすいよ」「こっちからだと見えるよ」と教え合う様子もありました。

不思議そうに眺めている子もいれば、数種類ある絵を友達同士で交換する子など、それぞれ思い思いに楽しみました。

消える絵に夢中になる子どもたち
消える絵に夢中になる子どもたち

子どもたちは非常に積極的で、思ったことをためらわず発言していました。また、職員が言葉をかけずとも、子どもたちの視点で不思議だと感じることを言葉にし、実験結果からなぜそのような現象が起きるのかを自分で考える様子がうかがえました。

純粋に「すごい!」「なんで?」という気持ちを持ってほしい

水に浮く野菜の企画を担当した清水さんにお話を伺いました。

「大人たちが科学に対して構えすぎないようにしています。今回の水に浮く野菜も、どうして浮くのか沈むのか、突き詰めていくと野菜の密度や水分量が関係してくるのですが、その理由を子どもたちに考えてもらいたいわけではなく、純粋に『すごい!』『なんで?』という気持ちを持ってもらいたいと思っています。まずは『こういうことがあるんだ』ということを知ってほしいです」

野菜をひとつずつ水に沈めて見せる清水さん
野菜をひとつずつ水に沈めて見せる清水さん

日常の中で思い出して遊べるような内容にしたい

科学遊びは、その日1回限りで終わるものではなく、日常生活につなげていけるように企画しています。そのため、使う素材はなるべく身近なものを選びます。

実験のために用意した野菜や食器
今回実験に使う野菜も、当日の給食に出されるものをピックアップしました

昨年、年間通して科学遊びを担当していた赤羽さんに、企画についてお話を伺いました。

「4月は入園したばかりで子どもたちも保育園に慣れていないため、子どもたちが簡単な手順で楽しめるもの、冬は乾燥した空気を生かして静電気を利用したものなど、季節に合わせた遊びを用意します。(今回取材をした)7月はプール遊びが始まるので、水を利用した科学遊びを企画しました。プール遊びのときに今回の遊びを思い出したり、今度は自分で実験をしてみたりしてほしいです」

子どもたちの前で実験をやってみせる赤羽さん
子どもたちの前で実験をやってみせる赤羽さん

体験を積み重ねることで自ら考えるきっかけをつくる

科学遊びの取り組みについて、施設長の篠田さんはこう語ります。

「科学遊びの理想は『どうして虹ができるの?』『どうやったらぴかぴかの泥だんごが作れるの?』といった子どもたちの疑問を、実際にやってみて一緒に考えていけること。でも、子どもの疑問について考察しながら科学遊びを行うには、まだ子どもも職員も経験が足りないので、まずは私たち大人が感動できる事象を取り上げて、科学遊びとして子どもたちと共有していきたいです」

今回お話を伺った職員のみなさん
今回お話を伺った職員のみなさん(左から清水さん、篠田施設長、赤羽さん)

今回の取り組みでは、まずは科学遊びで子どもたちに様々な科学的事象に触れてもらうことを大切にする。その体験を積み重ねることで、日常で起こっている様々な事象について子どもたちが自ら考えたり、自由な発想や発言を促したりするきっかけにつなげたいという職員の思いが、取材を通じて伝わりました。

それはどろんこ会グループが考える6つの力のうち「感じたこと・考えたことを表現する」活動にあたり、「保育所保育指針」の10の姿における「思考力の芽生え」「言葉による伝え合い」を育むことにつながっていきます。

実験中、積極的に発言する子どもたち
職員は子どもたちの自由な発想や発言を促す声かけを心がけています

今回は浦安どろんこ保育園の「科学遊び」の取り組みから、「感じたこと、考えたことを表現する」を考えてみました。

ただ預かるだけの保育ではなく、「これからの社会を創る子どもが経験すべきこと」「日々の生活や遊びを通して学びに向かう力を育むこと」を考え、その機会をつくっている園・職員のエピソード。今後も様々な園・職員の【乳幼児期に育む6つの力を考える】シリーズをお伝えしていきたいと思います。

施設情報

浦安どろんこ保育園

 

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