「ジブンで選ぶ」就労支援とは──就労支援つむぎ 武蔵野ルームの施設長が専門学校で講義

2026.02.19

#就労支援

TSUMUGI CAFE武蔵野 就労支援つむぎ 武蔵野ルーム

0歳から人生を終えるその時まで、すべての人が「生きる力」をもって、よく生きられる社会を創る──どろんこ会グループが描くビジョンです。そのため保育・発達支援にとどまらず、成人期の「はたらく」を支える就労支援事業にも力を注いでいます。障害の有無にかかわらず、混ざり合い、自己決定し、自分らしさを発揮できる場を創ること。その思想は就労支援においても変わりありません。

2026年1月、就労継続支援B型事業所「就労支援つむぎ 武蔵野ルーム」(東京都西東京市、以下「武蔵野ルーム」)の松永施設長が、埼玉福祉保育医療製菓調理専門学校(埼玉県さいたま市)にて講義を行い、日々の取り組みを学生の皆さんにお伝えしました。

講義の後は、利用者の皆さんとともに武蔵野ルームが運営する「TSUMUGI CAFE 武蔵野」のスパイスカレーと自家焙煎コーヒーを教室で出張販売。学びと体験を通して、武蔵野ルームの「いま」を五感で感じていただく一日となりました。

当日の様子をリポートします。

講義後、カレーとコーヒーの出張販売の様子
講義後、TSUMUGI CAFE 武蔵野のコーヒーとスパイスカレーを販売

就労支援つむぎ 武蔵野ルームが大切にしている4つのこと

松永施設長が担当したのは、同校保育士科の選択ゼミ「障がい」です。

ゼミの担当講師は、発達支援つむぎ ふじみ野ルーム(埼玉県ふじみ野市)で保育所等訪問支援事業に携わる訪問支援員(保育士)の古川さん。子ども発達支援センターつむぎ 浦和美園(埼玉県さいたま市)で施設長を務めた経験もあります。

古川さんはゼミの方針として、児童発達支援という枠にとどまらず、障害そのものと向き合い、「自分自身の『支援の軸』を見つけてほしい」との思いから学びを展開してきました。

今回は外部講師を招いての締めくくりとして松永施設長が登壇。スパイスの芳醇な香りが広がる中、講義が始まります。

松長施設長の講義の様子
「障がい」ゼミで登壇した松永施設長(正面奥)

就労継続支援とは、障害や病気などにより一般就労に困難がある方に対し、働く機会を提供するとともに、就労の継続や社会参加に向けた支援を行う福祉サービスです。障害者総合支援法に基づき実施されています。

松永施設長はまず、

  • 対象となる利用者
  • 就労継続支援A型とB型の違い
  • 工賃の考え方
  • 就労支援つむぎ 武蔵野ルームの理念
  • 日々の活動内容

ーについて説明。そのうえで、武蔵野ルームが特に大切にしている4つの運営方針を紹介しました。

1.「ジブンで」選択する

どろんこ会グループは「にんげん力。育てます。」を理念に掲げ、自分で考え、選び、行動する力を大切にしています。その姿勢は就労支援においても同様です。

例えば、武蔵野ルームでは利用者の皆さん自ら、その日の仕事内容を選びます。出勤後、ホワイトボードに掲示された予定を確認し、希望する業務の欄に自分の名札を貼るところから一日が始まります。

出勤後、ホワイトボードに名札を張り自ら業務内容を選択する様子
その日の体調や気持ちに合わせて仕事内容を自ら選択

仕事内容は、調理、接客、オリジナルコーヒー「Do coffee」の製品づくり、トートバッグ制作、栗畑の管理保全や栗の販売など多岐にわたります。それぞれの業務工程を細分化し、一人ひとりが「できること」「得意なこと」を見つけやすいよう工夫しました。

「自分で選ぶからこそ主体性や責任感が表出されやすくなります。初めは頑張りすぎてしまう方もいますが、次第に自分の心身の状態を客観的に捉え、セルフコントロール力が磨かれてゆきます」と松永施設長。

その分、週末に近づくと体力を要する業務が敬遠されることもありますが、誰も名札を貼らない様子を見かねて「今日は自分がやるよ」と自ら手を挙げる利用者さんも。お願いされるのではなく、自分の意思で運営に関わる。それが日常の中にある風景だと言います。

2. 失敗してもよい

松永施設長が支援の中で最も大切にしていることは、「失敗しても全然大丈夫」と言える環境づくりです。

利用者の皆さんの多くはこれまで、失敗を否定される経験を重ね、自信を失ってきた方が多いと言います。「だからこそ『失敗してもいい』『それは失敗じゃない』と伝えたい」と松永さん。失敗は次の行動につながる一つの経験に過ぎません。

利用者の方が調理室から料理を運ぶ様子
信頼関係を基盤に

例えばカフェでお客様に運ぶ水をこぼしてしまった時、「気をつけて」と注意するのではなく、「どうしたらこぼれにくくなると思う?」と一緒に考える。すると、それぞれの工夫が生まれてくる。

失敗しても信頼関係は壊れない──その安心感があるからこそ、失敗を恐れず、次第に本来の力が発揮されるようになると言います。

3. インクルーシブな環境

武蔵野ルームには現在、18歳から63歳まで約30名の方が登録しています。 年齢も性別も向き合う困難もさまざま。互いの得意・不得意を知り、認め合い、補い合う姿はまさに共生社会の縮図です。

さらに、同じフロアには放課後等デイサービスと児童発達支援事業所「発達支援つむぎ 武蔵野ルーム」を併設しています。それぞれに関わり合うことで、支援の幅や見通しの明るさが生まれています。

年齢や性別の違う利用者の方が協力して調理を行う様子
年齢や立場を超えて自然に助け合う日常

地域の中でのインクルージョンも大切です。 TSUMUGI CAFE 武蔵野は、地域に開かれたカフェとして運営しています。おいしさや居心地のよさで選ばれることを目指し、メニューや空間、器にも徹底的にこだわっています。

「クオリティを保つのは大変では?」と聞かれることもあるそうですが、「そこが支援の見せどころ」と松永さん。安心して間違えられる環境と、間違えずに取り組める環境。その両方を整えることでパフォーマンスは確実に高まるそうです。

4. 障害ではなく、「その人」と向き合う

武蔵野ルームに配属されたばかりのスタッフからは、「その方の障害名やこれまでの経歴を知りたい」という声が多く聞かれるそうです。しかし松永さんは、あえてそれらを伝えません。

「基本的には人が好きであればそれでいい」。大切なのは障害名に沿った支援ではなく、「この人に、いま何が必要だろう」と考えること。その問いから生まれる関わりこそが、その方にとって必要な支援になると言います。

その分、スタッフ同士の情報共有は密に行います。「全てのスタッフが、全ての利用者さん一人ひとりの状況を細やかに理解している」。それが武蔵野ルームの強みです。

登壇した松永施設長
「障害ではなく、その人を見て」と松永施設長

ある日、利用者の皆さんと共に「仕事に行きたくないとき、どうしている?」というテーマで対話の機会を持ちました。すると、全員が口をそろえて「つむぎに行きたくないと思ったことがない」と答えられたそうです。

武蔵野ルームは、松永施設長自身が驚くほど利用者の皆さんが生き生きと通われる場所。「ぜひカフェに足を運んで、実際の様子を見てください」と呼びかけ、講義は締めくくられました。

教室がTSUMUGI CAFE 武蔵野に

講義の後は、教室でTSUMUGI CAFE 武蔵野の商品を販売しました。

この日のメニューは、薬膳チキンカレー、ポークビンダルー、自家焙煎コーヒー、季節限定「ゆずと紅茶」のパウンドケーキです。

教室の中でカレーとコーヒーを出張販売する様子
待ちに待ったランチタイム

学生の皆さんからは「普段は甘いカフェオレしか飲まないけれど、苦いのにおいしい。初めてのコーヒー体験」「(ポークビンダルーは)想像以上に辛い!けれど、それがまた本当においしい」などの感想を寄せていただきました。

販売したドリップバッグ
お土産用の「Do Coffee」ドリップバッグも人気

講義の感想も伺いました。

・「誰でも来てくださいという」お店の形態が既にインクルーシブ

・言葉かけの工夫ひとつで主体性を引き出せることに納得した

・将来に不安を感じる保護者にとって希望になる場所だと思う

中には、講師の古川さんから話を聞き、事前にTSUMUGI CAFE 武蔵野に来てくださった方もいらっしゃいました。

・カフェは明るくておしゃれ。就労支援施設のイメージが一変した

・誰が利用者の方で誰がスタッフの皆さんか分からない

・障害ではなくその人を見て、という支援の在り方が深く印象に残った

最後に、ゼミの担当講師である古川さんにお話を伺いました。

「近年、インクルーシブという言葉が浸透してきましたが、その根底にあるのは『自分らしさを大切にする』という考え方です。ゼミでも学生の皆さん一人ひとりが自分らしくいられ、それぞれの良さを認め合える場となるよう取り組んできました。卒業後、皆さんが自分自身のよさを認めながら、それぞれの軸を持ち、活躍されることを願っています」。

担当講師の古川さんと松永施設長が並ぶ様子
ゼミ担当講師の古川さん(左)と松永施設長

どろんこ会グループはこれからも「守る・分ける」福祉から、「ジブンで選ぶ・社会を生きる」福祉を実現してまいります。

TSUMUGI CAFE 武蔵野はJR中央線・武蔵境駅からバスで約10分。明るく心地よい空間で、こだわりのメニューをぜひお楽しみください。

施設情報リンク

就労支援つむぎ 武蔵野ルーム

TSUMUGI CAFE 武蔵野

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発達支援つむぎ 武蔵野ルーム

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