地域と共にあるインクルーシブ保育とは─地域連携活動(上)
2026.03.05
インクルーシブ保育のフロントランナーとして、常に新たな挑戦に取り組んできたどろんこ会グループ。2023年には、保育所と児童発達支援事業所を一つ屋根の下で一体的に運営する「完全併設施設」をスタートしました。両施設を隔てる壁はなく、玄関も職員室も一つ。全ての子どもを全ての大人が保育・支援しています。
一方、保育や児童発達支援をそれぞれ単体で行う施設も全国に数多く展開しています。では、単体施設ではインクルーシブ保育は実現できないのでしょうか。
答えは、「いいえ」。どろんこ会グループでは全国約190の施設において、主に次の4つの視点からインクルージョンを実践しています。

4つの視点で実践するインクルージョン
①年齢で分けない「異年齢保育」
どろんこ会グループでは、年齢で子どもを分けません。大きな家で、全ての子どもが兄弟姉妹のように手を差し伸べ合い、時に衝突し、育ち合う環境を大切にしています。
②大人同士が混ざり合う「対話文化」と「研修体制」
子どもをまんなかに置いた対話を重ね、職種や立場を越えて学び合う文化があります。丁寧な目線合わせが、保育・教育・支援の質を支えています。
③子どもと大人が共に育つ保育
「子ども一人ひとりが権利の主体である」という人権意識を基に、子どもも大人も混ざり合い、共に育ち合う存在として日々の活動を重ねています。
④地域におけるインクルージョン
子どもの福祉を支える拠点として、地域に開かれた施設運営や地域との連携活動を積極的に行っています。

「一つ屋根の下」から地域に広がるインクルージョン
中でも、地域におけるインクルージョンは重要です。子どもたちはやがて、地域の中で生きていく存在だからです。インクルーシブ保育の実践を支える「児童発達支援ガイドライン」でも、基本理念の一つとして「地域社会への参加・包摂(インクルージョン)の推進」が掲げられています。(*1)
また、こども家庭庁は2026年1月、障害のあるこどもの地域における居場所づくり等の普及を目的として、「地域のインクルージョン総合支援推進事業の実施」に関する通知を発出しました(*2)。現在、国をあげて地域のインクルージョンが進められているのです。
どろんこ会グループでは創業以来、「地域との連携活動」に力を入れてきました。
例えば―
- 商店街ツアー
- 銭湯でお風呂の日
- 高齢者や学生との世代間交流
- 近隣施設との交流活動
- 決まった公園で、地域の方とともに過ごす青空保育

これらの活動を通して、子どもたちは地域の中で様々な人や仕事と出会います。
インクルーシブ保育が「全ての子どもが共に育ち合う環境づくり」だとすれば、地域との連携は、その環境を社会全体へと広げる架け橋です。年齢や立場を超えて人と関わる経験は、社会の中にある多様性を、知識ではなく体験として積み上げる機会となります。それはまさに、インクルーシブ保育の理念を社会の中で実践することでもあります。
地域と共に「10より100の経験」を
そして、これらの経験は子どもたちの「生きる力」を育みます。
体力、主体性、判断・行動力、環境への意識――
人間が生きていくのに必要な力は、大人が子どもと共に外へ出かけ、さまざまな人と関わりながら、一つでも多くの体験を重ねる中で身につけてゆくものです。そして、障害があってもなくても、自立して生きていくために欠かせないのが「人とのつながり」です。頼り合い、ときにはぶつかり合いながら理解を深め、困ったときには自然に手を差し伸べ合える関係性。そこに、社会を生きる土台があります。
「人と関わる力」や「葛藤を調整する力」を育み、自分の好きなことや得意なことに出会うために。どろんこ会グループは地域と連携しながら、「10より100のホンモノの経験」を創り続けています。

さらに連携活動は、「多様な子どもを受け入れる地域」を育てることにもつながります。
地域の方々が、これまで交流する機会の少なかった障害や病気、発達に気がかりのある子どもたちと交流し、その姿を理解する機会は、多様性を受け入れる社会の基盤づくりとなるはずです。地域との連携活動は、共生社会の実現に向けたアクションなのです。
次回は、どろんこ会グループの実際の地域連携活動の様子をご紹介します。
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