保育士が語る「水の事故から子どもを守る、水辺のリスクマネジメント」

2020.07.30

#保育

保育士

夏になると子どもたちが楽しみにしているのが水遊びです。どろんこ会グループでは、プール遊びの他に、川遊びをする園もあり、楽しそうに目を輝かせて遊ぶ園児たちの姿が見られます。しかし、水遊びには危険も伴います。小さな子どもが犠牲になる水難事故は、海や川、プールなど、毎年どこかで発生しています。

こうした事故を防ぐために、どろんこ会グループでは、水遊びのマニュアルを徹底するだけでなく、より安全に行えるよう、専門的な資格を持つ職員による勉強会や研修を開催し、水辺におけるリスクマネジメントを学んでいます。

今回は、どろんこ会グループの「水辺のリスクマネジメント講習会」で講師を務めた仲町どろんこ保育園(埼玉県朝霞市)の羽澤園長に、水遊びのメリットとリスクについてインタビューしました。

自ら専門資格を取得し、園での川遊びを実現

――これまでの経歴や資格について教えてください。

2013年にどろんこ会グループに入社し、2つの園での勤務を経て現在は仲町どろんこ保育園の園長を務めています。

保育士資格以外にも、川遊び資格の「RACリーダー(川に学ぶ体験活動協議会)」や、「自然体験活動指導者(NEALリーダー 全国体験活動指導者認定委員会)」、「小児救命救急法国際資格(EFR-CFC)」、「危険生物対策アドバイザー(ハチ・ヘビ)」を持っています。

私は幼い頃からマリンスポーツや釣りなどを経験し、潜ることも泳ぐことも大好きでした。高校の3年間は、市民プールでライフセーバーの仕事を夏季限定で行っていました。保育士を目指していることで、大きいプールだけでなく、子ども用プールの監視もさせてもらったことがあります。

入社後、まずは朝霞どろんこ保育園(埼玉県朝霞市)に配属されました。園のすぐ目の前にきれいな川(黒目川)が流れていたので、子どもたちと川遊びをしたいと思いました。そのため、まずは安全面を考慮して、自ら川遊び資格(RACリーダー)を取得し、当時の園長に川遊びを提案したんです。2015年に、初めて川遊びを保育の活動の中に導入することができました。

その後、講師の方をお呼びして川遊び指導者育成の研修会をセッティングしたり、2018年には新潟県の保育園で、海や川遊びの指導者としてボランティアをしたりしました。今でもどろんこ会で、専門家の講師をお呼びして職員向け研修会の場づくりをを行うなど、自分の知識と経験を広く伝える活動を積極的に行っています。

危険生物対策講座の講師を務める羽澤園長職員向け危険生物対策講座の講師を務める羽澤園長

水遊びで大人が注意すべきこと「子どもは静かに溺れる」

――まさに「水遊びのプロフェッショナル」ですね。これから水遊びが増える時期ですが、保育士や保護者はどのような点に注意したらいいのか教えてください。

まずお伝えしたいのは、「子どもは静かに溺れる」ということです。「溺れたら大きな音で暴れて騒ぐだろう」と想像しがちですが、実際は本当に静かに沈んでいきます。というのも、子どもは溺れそうになると本能的に体が硬直し、何が起きているのか理解できないまま、声を出す余裕もないまま沈んでしまうからです。これは「本能的溺水反応」といいますが、溺れている子どもの近くに大人がいてもなかなか気付かないくらいの静かさなのです。

資料1
注1

保育業界では「子どもは水深2〜3cmでも溺れる」というのが常識なのですが、例えば縁側に置いた「たらい」に雨水が溜まっていて、そこで子どもが遊んでいて溺れてしまうケースがあるほどなのです。

実際、子どもの「不慮の事故」の死因のうち、「交通事故」に次いで多いのが「溺水(屋外)」なんですよ。

資料2
注2

こうした事故を防ぐためにも、私たち大人は常にリスクを学び、十分な注意を払うことが重要なのです。顔が水に濡れても大丈夫な子や、泳ぎが得意な子ほど、水の怖さを知らない分、盲点になりがちです。「楽しんでいるから安心」などと油断しているうちに、調子に乗ってしまい溺れてしまうこともあるのです。

――園では監視役の職員が子どもに話しかけられることもあると思いますが、どのように対応しているのでしょうか。

まずは、「この先生はみんなの命を守るために監視しているから、一緒に遊ぶことはできないよ」とあらかじめ子どもたちにきちんと伝えることが重要だと思っています。そして「溺れると死んでしまうこともある」というリアルな話も伝えるようにしています。こうした話は幼児クラスになると理解できますし、もし監視役が話しかけられても反応しなければ、子どもは「この先生には今は話しかけてはいけないんだ」と感じ取ってわかってくれるものです。

「どうしてもその監視役の先生と遊びたい!」という子の気持ちも尊重しています。グループ分けの際に、それぞれの監視員と水遊び担当の先生を子どもたちに伝えた上で、どのグループで水遊びをしたいか選んでもらうようにするのです。子どもに我慢を強いることなく、監視担当者に話しかけてくる子も減らせます。

子どもの遊び方のタイプによってグループ分けをするという方法も効果的です。水が苦手でゆっくり遊びたい子と、跳ねたりしながら思いっきり遊びたい子を一緒にしてしまうと、遊び方が全く異なるので監視しにくくなるんです。なるべく同じタイプの子を同じグループにすると、同じ視点で監視できるようになりますよ。

プール遊びの様子(写真は過去のもの)
プール遊びの様子(写真は過去のもの)

――もし溺れている子どもに気づいた場合、どのように行動したら良いのでしょうか。

私が現在園長を務める仲町どろんこ保育園では、リスクマネジメントが得意な職員と一緒に作成したフローチャートを監視役が常に身につけていて、何かあった際にはそれに従って行動できるようになっています。他の職員に笛で知らせてヘルプに来てもらったり、119番通報したり、AEDを準備したり。プールで遊んでいた職員は他の子どもたちを見るなど、職員同士で連携をとりながら対応します。

また、いざという時に気が動転して動けなくならないよう、事前にいろいろなパターンを想定して、体で動きを覚える訓練も行っています。

――家庭でプールや海、川などに出かける場合に気を付けるべきポイントを教えてください。

プールや海では、「足入れ浮き輪」で遊ぶ子どもたちをよく見かけますが、ひっくり返ってしまうと足が抜けず、大きな音も出しにくいので、周りが気が付きにくく、そのまま溺れてしまいます。「足入れ浮き輪」で遊んでいる時には特に、大人は絶対に子どもから目を離さないようにしてください。

海に行く際には、ライフセーバーがいたり、遊泳区域を示すブイが設置されていたりする、管理された海の方が安心です。ただ、浅いところで遊んでいても気づいたらどんどん流されていたということも起こりえますから、常に潮には流れがあることを忘れてはいけないと思います。

職員で川遊びの研修をした様子
職員で川遊びの研修をした時の様子

川に関しては、地形が結構複雑で、浅く見えても急に深くなっている箇所もあるので、できれば底が見えるくらい綺麗な川がいいですね。水が濁っていたら絶対入らないほうがいいです。

また、上流で雨が降ると急に水かさが増して逃げ遅れることもありますから、上流の天気も確認しておいてください。川底には釣り針が落ちていることもあるので、マリンシューズなどを履いたほうがいいでしょう。学校用の上履きも安くて動きやすいのでおすすめです。ただし、川の中で脱げないよう、ぴったりサイズを履かせてください。

ライフジャケットも重要です。子どもの場合、股下ベルトがないものを着せるとライフジャケットだけ浮いてすぽっと抜けてしまうので、必ずベルト付きを選んでください。

出かける際には、AEDがある場所を調べて頭に入れておくと何かあった時にスムーズに動けると思います。防水ケースなどに入れて携帯電話を常に持っておくことも重要ですね。 もちろん、危ない時は川や海に入るのを「やめる」判断をすることも大切です。

水遊びの可能性は無限大!幼少期から本物体験を

――水遊びのリスクを考えると不安に思う大人も多いと思いますが、改めて水遊びのメリットについて教えてください。

まずお伝えしたいのは、「水遊びはとっても楽しい」ということ。水遊びには可能性が無限大にあって、様々な効果があるんです。例えば、子ども自身が遊びながらリスクを学んだり、浮力や流れを楽しんだり、バランス感覚を身につけたり。科学的な側面でも、水面がどうしてキラキラ光るのかとか、水は無形でいろんな形に変わることなども学べます。

どろんこ会グループでは原体験、本物に触れる経験を大切にしていますが、水遊びも同じで、「危ないからやらせない」のではなく、実際に川や海に触れていく中で学べることが大きいと思うんです。

水遊びによる原体験は、子どもの財産に
水遊びによる原体験は、子どもの財産に

もちろん、いきなりではなく、まずはプールで水に触れ、幼児クラスや小学生くらいになり水に慣れてきたところで、川や海に連れて行く。このように、丁寧に段階を踏むことが重要です。そして、川や海を見て「今日は海がすごく荒れているな」とか「波が高いな」「川の流れが早いな」など、大人が感じたことは全部、声に出して子どもにも伝えてあげてください。そういう一言ひとことが子どもの記憶に残るのです。子どもの時の体験は、大人になってからの判断の軸になります。できるだけ、子どものうちに何かを選択するなど、いろいろな経験を積んでおくことが大切なのです。

小学校高学年くらいになると恐怖心よりも好奇心のほうが勝ってきますし、その場に友だちがいたら「怖い」と言えずに、見栄を張って川や海に入ってしまうこともあるでしょう。中高生くらいになると、子どもだけで海や川に出かけることもあると思います。そうした時のためにも、幼児期からしっかり教育をしておいたほうがいいのです。

理想的なのは、もし川や海に行って「今日は危ない」と思ったら、自分が入るのをやめるだけでなく、「昔、こういうところで危ない経験をしたことがあるから今日はやめよう」と周りにいる友だちのことも止められる勇気のある人になること。そうすれば、悲しい事故は防げるようになると思います。

今年も子どもたちには、思いっきり水遊びを楽しんで、成長してもらいたい。そのために、リスクマネジメント研修は毎年開催したいですし、もっと広めていきたいと思っています。

水遊び
川遊びを楽しみつつ、子どもたちに大事なことを教えている羽澤園長

(編集後記)

「子どもたちに本物の経験をさせたい」と自ら学び、自然体験や救命の資格を取得した羽澤さん。その高いプロ意識と豊富な知識、そして行動力は、日々の保育に生かされるだけでなく、どろんこ会グループで働くほかの職員たちへの良い刺激にもなっています。

現在、どろんこ会グループには、約80名の川遊び資格保有者がいます。「子どもたちには、危ないからやらせないのではなく、しっかりと安全を守りながら経験を積ませたい」そう語る羽澤さんの取り組みは、これからもグループ全体に広がっていくことでしょう。そして、こうした原体験が、子どもたちの明るい未来の糧になっていくはずです。

注1:「教えて!ドクター」公式HPより

注2:「子どもの事故の現状について(消費者庁)平成29年度第1回子供の事故防止に関する関係府省庁連絡会議」資料より

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