「食べたい」から始まった、発達支援つむぎ ふじみ野ルームとふじみ野どろんこ保育園のかまど作り

2022.04.07

#保育

ふじみ野どろんこ保育園 発達支援つむぎ ふじみ野ルーム

どろんこ会グループが推進している認可保育所と児童発達支援事業所の併設施設。首都圏を中心に8箇所展開しており、各施設では日々試行錯誤しながら併設ならではの取り組みを実践しています。

今回は埼玉県ふじみ野市にあるふじみ野どろんこ保育園と発達支援つむぎ ふじみ野ルーム(以下、つむぎふじみ野ルーム)のスタッフが協力し、「子育て探究費」制度を利用した「かまど作り」に取り組んだ様子を紹介します。

広い園庭があるふじみ野どろんこ保育園とつむぎふじみ野ルーム(併設施設)
広い園庭があるふじみ野どろんこ保育園とつむぎふじみ野ルーム(併設施設)

食べることをきっかけに、発達や関わり合いを深める

今回かまど作りを企画した二井さんはつむぎのスタッフです。日ごろから併設施設として子どもたちが障害の有無に関係なく、共に生活し、育ちあうために、より良い保育環境にしていきたいという思いを強く持っていました。

現在、両施設の子どもたちは同じ園舎で過ごしていますが、別々に活動していることもしばしば。そこで、スタッフの所属の違いに関わらず応募できる社内制度「子育て探究費」を活用して、子どもはもちろん、大人もより深く関わり合える活動を提案しようと考えました。(※子育て探究費とは子どもたちの「6つの力」を育むための取り組みを公募し、審査に通過した取り組みに対して活動費の助成を行う制度)

そして、子育て探究費に申請する活動内容を考えるにあたり、注目したのが、子どもたちの食への興味関心の高さでした。

つむぎふじみ野ルームでは、昨年度から土曜日の体験活動として、調理活動を継続していました。子どもたちは食べることが大好きなため、調理活動を通して積極的な姿勢や挑戦する姿が見られ、成長を感じる場面が多かったのです。また、園庭で焚き火を使った調理を行ったところ、保育園の子どもたちも自然と集まり興味津々、食べることへの意欲も旺盛でした。

そこで、子どもたちの興味関心が高い調理活動の幅を広げるため、また本物の火を扱う直接体験の機会を増やせることから、かまど作りに決めました。

ふじみ野かまどプロジェクトの概要
ふじみ野かまどプロジェクトの概要

園会議にて二井さんから、両施設スタッフへかまど作りを提案したところ、多くのスタッフが「一緒にやりたい」と手を挙げました。

まずは集まったメンバーに「かまどを使ってどんなことがしたいですか?」と問いかけました。すると、「本物の火に触れてほしい」「ゼロから何かを作り上げる大人の背中を、子どもにも見せていきたい」「子どもも大人も一緒に試行錯誤を経験したい」などの意見が。普段の子どもたちの様子などを話し合ううちに、ただかまどを設置するだけではなく園庭全体の整備も合わせて行うことになりました。

園庭整備の様子
園庭整備の様子

かまど作りから広がる子どもたちの世界

子どもたちにも園庭にかまどを作りたいことを話します。

まずは、過去にかまどを作ったことのある系列園の南魚沼どろんこ保育園(新潟県南魚沼市)とオンライン通話をしました。両施設の子どもたちが交流をしながら、実際のかまどを見たり話を聞くことで、かまどとはどういうものかを知ってもらいました。

子どもたちは、かまどを作るためにはレンガが必要なことを知り、普段は散歩を好まない子も、かまどのためならと一緒に買い物に行きました。帰り道はレンガの重さに負けそうになりながらも、かまどで作る焼きマシュマロを想像してやる気を出す子どもたち。かまど作りへの期待が高まっていることが伝わってきました。

かまど作りに使うレンガ
子どもたちと買いに行ったレンガ。ひとつ3kgと大人でも運ぶのは大変でした

また、火との関わりを増やすために園庭で焚き火を頻回実施したところ、子どもたちが焚き火ごっこをするようになりました。

経験したことから焚き火を再現すべく、自分たちのイメージを伝え合いながら焚き火の火や焼き芋を色紙で作っていきます。遊んでいくうちにイメージはさらにふくらみ、最終的には新聞紙を使ってテント作りやブランコ作りにまで発展。自分たちでルールを作り一緒に遊ぶなど、子ども同士で関わり合いながら遊び楽しむ姿が見られました。

作ったブランコで遊ぶ子どもたち
焚き火ごっこからブランコ作りにまで発展

ある日、かまどを試作してみると、子どもたちが続々と集まってきました。

そのうちの一人が、木の枝を集めてかまどの中に置きました。焚き火が始まると思い、必要なものを自分で考えて用意したのです。発話が苦手でも、行動で活動への参加の意思を示してくれました。

そのほかにも普段は消極的な子がかまどを使って積極的に遊んだりと、子どもたちの様子からかまどへの期待感、ワクワク感が伝わってきました。

かまどごっこをする子どもたち
試作後、子どもたちが遊べるようにと小さいかまどを残しておきました

子どもたちの様子について、プロジェクトを企画した二井さんはこう話します。

「この活動を通じ、保育園とつむぎの子どもたちが一緒に活動をする機会が増えました。また、かまどという共通の話題で会話が弾んだり、ごっこ遊びができたりと、子どもの経験自体が増え、世界がちょっとずつ広がっているように感じています」

さまざまな想いが積み重なったかまどの完成

かまど作りでは、保護者の方にも協力を仰ぎました。想定よりも多くの方が「やってみたい」と申し出てくださり、その中で工務を本業とされている方にもご協力いただけることになりました。

当日、必要な道具をご用意いただき、使い方や組み立て方の手順を教わりました。まずはかまどを設置する場所に穴を掘り、ブロックを敷きセメントで固めることで土台を固めます。次に、セメントを使ってレンガを積み上げていきます。

かまど作りの様子
子どもたちも一緒にかまどを作っていきます

スタッフも子どももみんなでかまどを囲みたいという思いがあったこと、子どもたちがかまどの角でケガをしないように、かまどを円柱状に作ることにしました。

1日半の作業を経て、かまどの完成です。

ほぼ完成したかまど
積み終わったかまど。セメントが完全に乾いたら完成です

今回の取り組みについて、二井さんはこう語ります。

「かまど作りをしてみて、物が完成することよりも、保育園とつむぎが協働して一緒に取り組めたことに、企画して良かったと感じました。また、作業日が土曜日だったこともあり、日頃つむぎで行っている体験活動を保育園の保護者の方が見てくださったり、今回のことがきっかけでどろんこサポーターズ(保護者有志の団体)にご参加いただくことになったりと、かまど作りを通じて保護者の方と交流できたこともうれしかったです」

かまど作りに取り組む二井さん
保護者の方に教わりながらかまど作りをする二井さん

つむぎふじみ野ルーム施設長の佐藤さんは

「今回のプロジェクトのように、つむぎと保育園が一つの目標に共に取り組むことで、さらに深く話し合える関係性を築いていきたいと思っています。スタッフの連携が強くなれば保育の質も上がり、子どもたちの成長にもつながると考えています」と、今後への期待も込めて話しました。

併設施設として、日頃から分け隔てなく両施設の子どもとスタッフが一緒になって活動することを理想としている両施設長。今回の取り組みには手ごたえを感じている様子で、ふじみ野どろんこ保育園施設長の内田さんは、次のように語りました。

「つむぎが土曜日に行っている体験活動は、つむぎのための活動というイメージがあったため、保育園とつむぎで一緒に活動することに遠慮してしまったりと難しさを感じていました。その中でつむぎが土曜日に焚き火をすることで保育園の子どもたちが興味を示している様子から、保育園の子どもやスタッフを誘ってくれるようになりました。そこから徐々に一緒に活動することが増え、かまど作りにつながりました。今までのさまざまな取り組みも相まって、理想の併設施設になるための第一歩になったと感じています」

左から内田施設長、二井さん、佐藤施設長
左から内田施設長、二井さん、佐藤施設長

内田施設長はかまど作りの完成はゴールではなくスタートだと言います。今回の活動を通して、両施設のスタッフ同士の連携を深め、理想の保育を提供できるよう、これからも試行錯誤を続けてまいります。

かまどを使った活動は、今後両施設のブログでもお伝えしていきますのでお楽しみに。

施設情報

発達支援つむぎ ふじみ野ルーム

ふじみ野どろんこ保育園

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