常に挑戦し続ける大人こそ保育業界へ セカンドキャリアに保育士を選んだ元プロ野球首位打者・髙澤秀昭にどろんこ会の安永理事長がインタビュー

2025.06.19

#保育

大豆戸どろんこ保育園 東大和どろんこ保育園

どろんこ会グループには異業種から転職して保育士として働くスタッフが数多くいます。

その中でも特に異彩を放っているのが、63歳にして元プロ野球選手から保育士に転身した髙澤秀昭さんです。

その特異な経歴は多くのメディアでも注目され、取り上げられています。

今回は社会福祉法人どろんこ会の安永愛香理事長が、現在大豆戸どろんこ保育園で保育士として働く髙澤さんにインタビューした特別対談をお届けします。保育とスポーツ、さまざまな視点で語り合いました。

髙澤さんと安永さん
安永理事長と髙澤さん

異業種から保育士へ

 

髙澤さんと安永理事長、二人とも全く異なる業界から未経験にもかかわらず保育士資格を取得したという共通項があります。

髙澤さんはロッテオリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)でパ・リーグ首位打者やゴールデン・グラブ賞、オールスターMVPを受賞するなど輝かしい実績を残しました。現役引退後はコーチとして後進の指導にあたり、野球教室「マリーンズベースボールアカデミー」では子どもたちに野球の楽しさを伝えました。

プロ野球選手として活躍
現役時代は走攻守に活躍

野球教室での経験から子どもとかかわる仕事がしたいと思い立ち、近所の保育園を直接訪ねたという髙澤さん。どこの園でも「資格がないと雇えない」と言われたなか、偶然出合ったのが、どろんこ会グループが運営する認可保育園「まめどくれっしゅ」でした。

まめどくれっしゅの当時施設長を務めていた引間さんが、髙澤さんに保育士資格の取得を勧め、資格の取り方なども親身になって教えました。そして髙澤さんは60歳にして専門学校へ入学、2年間の学びを経て、晴れて保育士となったのです。

一方の安永理事長は東京理科大学で経営工学を修め、外資系金融機関に就職。出産後、保育園に子どもを預けながら仕事を続けましたが、保育サービスの質や保育業界の抱える問題に危機感を抱き、自ら保育園を立ち上げることを決意しました。保育業界全体の更新を目指し、今では全国約180箇所に保育園、児童発達支援施設などを運営するに至ります。

園で子どもと接する安永理事長
長年施設長を務め、今も保育現場を回る安永理事長

子どもたちにはさまざまスポーツを知る機会を

安永:髙澤さんが野球を始めたのは何歳の時ですか?

髙澤:私は北海道出身で、田舎だったので小学校に野球チームはなく、実際に組織だった野球を始めたのは中学の野球部に入ってからです。

安永:自分で野球部に入ろうと決めたのですか?

髙澤:そうです。父親に伝えたら、家の仕事を手伝わなくなるからダメだと反対されましたが仕事も手伝うからやらせてくれと説得しました。いざ始めたらやはり面白くて、高校に入ってからは、勉強しなくなるからダメだと再び反対されたのですが、なんとか続けました。

髙澤さんの小学校時代
小学校時代の髙澤さん

安永:ご自身が野球選手になるルーツになったことは何だと思われますか?子ども時代の経験が足腰の強さにつながったとかありますか?

髙澤:思い返せば小学校時代はスケートやスキーをしたり、いろいろなスポーツをしていました。また、うちは農家でしたので、田植えを手伝ったりすることで、自然と体が鍛えられたのかもしれません。あと当時流行っていた『巨人の星』という漫画を読んで、野球は面白そうだなと(笑)。

高校時代の髙澤さん
苫小牧高校時代の髙澤さん(一番右)

安永:ご自身が育った環境の中で、遊びの中で、自然と野球に興味をもたれたのですね。

私が保育士になってからずっと考えているのは、どうしたら子どもたちが自分の好きなものに出逢って没入する体験ができるかということです。

私なりに出した答えは、子どもがいろいろなものに触れられるような環境を「10より100」用意してあげることでした。一方、野球やサッカーのような体を動かす遊びは、保育士側がこういう遊びがあるよ、こういうスポーツがあるよと、それに出逢わせてあげる意識をもっていないと、保育の現場ではなかなかできないと感じています。

イタリアの保育園を見学しに行った時、保育士の方がワールドカップのサッカーの試合をテレビで見せた後、テーブルに大きな箱いっぱいの粘土を持ってきて、「この粘土で今見たスポーツを粘土で表現してみましょう」という活動をしていました。海外ではいろいろなスポーツを知る機会を計画的に保育の中に取り入れているのだなと思った記憶があります。日本では他国に比べてそういうことは少ないかもしれません。

安永さんと髙澤さんが野球から保育のことまで語り合う
野球のこと、保育のことを語り合う二人

髙澤:野球に関していうと、日本は一つのスポーツに特化して幼いころからずっと続ける傾向にあります。ですが、小さい時から野球ばかりしていると体の動きが偏る場合があります。一方、海外では幼いころは野球、アメリカンフットボール、バスケットボール、ホッケーと、地域でできるスポーツをまんべんなくいろいろ体験しています。さまざまなスポーツをすることで総合的な身体能力を高めているので、大人になってからも伸びしろがあります。ですので、いろいろな方法があるとは思いますが、子どもたちにスポーツの機会を提供するのは大人側の役割だなと感じました。

安永:とても勉強になります。子どもたちにいろいろなスポーツがあるということを生活の中でどう教えていくかは大事ですね。野球だけ続けていけばプロになれるのではといった考え方も変わらないといけないですね。

子どもたちと園庭でサッカーをする安永さん
子どもたちに混ざってサッカーをする安永理事長

髙澤:そういう考えのもと野球を続けているお子さんはある程度のところまでは群を抜いて上手なのですが、そこから先が上がっていかないというケースもあります。総合的にいろいろなことをしている子の方が、粗削りでも一つの技術を身につけたときにぐんと伸びるのを見たことがあります。

安永:例えば週替わりでいろいろなスポーツを観戦するだけでも興味関心が変わるかもしれないですね。実際にしなくても子どもたちが何にピンと来るかは、本当に子ども次第なので。だからこそきっかけづくりは大事ですね。

さまざまな年齢、キャリアが混ざってこそよい保育現場に

安永:私は保育という人育ての仕事において、いろいろな人生経験をもっている人が先生として背中を見せることが非常に大事だと思っています。専門学校を卒業後、若いうちからずっと現場で働く保育士が多い中、髙澤さんのようなキャリアをもつ方が入ってきてくださるのはとてもうれしく思っています。

髙澤さんの姿を見て、自分も何かチャレンジしてみようと思うきっかけにもなっているので、髙澤さんのようなキャリアの積み方がもっと広がるとよいと心の底から願っています。若いスタッフにとってもとても勉強になっていると確信しています。

勤務する大豆戸どろんこ保育園の園庭にて
勤務する大豆戸どろんこ保育園の園庭にて

髙澤:私が所属している大豆戸どろんこ保育園のスタッフも若い方が中心ですが、私だけでなく年齢や性別がよい具合に混ざっているなと感じています。

その中でもシニアにはシニアの役割があるのかなと思っています。例えば、若い方は仕事に対してきっちりきちんと取り組もうと前のめりな部分もあるのですが、それを私のような年寄りが「まあまあ」といさめることもあり、緩和剤的な役割を少しは担えているのではないかなと。

安永:それは大きいと思います。若い保育士の中には、自分の言うことを子どもに聞かせなきゃと思ってしまうことも多くあります。でも、髙澤さんのような方が「そんな風に言葉をかけなくても」とか、「見守ってればよいんだよ」と言ってくださると、「あ、今自分は声を張り上げすぎていたな」と気づけると思うのです。現場はシニアの方から学ぶことが本当にたくさんあるはずです。

ただ、元プロ野球選手なので体力は絶対におありだと思いますが、年も重ねる中、疲れなどはいかがですか?

髙澤:実は入職後2カ月で椎間板ヘルニアを発症してしまい、手術をしました。体力には本当に自信があったのですが、0・1歳児クラスの担当なので、腰をかがめる姿勢が続いたことと、入職後の緊張感が加わったためだと思います。

こんなはずじゃなかったと一時は退職も考えたのですが、当時の施設長が「せっかく保育士資格も取ったのだし、パートタイムでもよいから続けてみたら」と言ってくださいました。

長身をかがめて1歳児と遊ぶ
180㎝近い長身を常にかがめているので慣れないうちは腰に負担も

安永:若い体力のある人だけで保育業界を創り上げていくのは違うと思っています。人生のキャリアを積んだ方が、どうすればご自身の体力と向き合いながらも続けていけるのかというのは大事な課題です。

髙澤:復帰後は働き方を変え、週4日のパートタイムで勤務しています。これが自分に合っていると思っています。自宅も近いのでどちらかといえば早番のシフトを多めにしています。

安永:朝早い時間帯をカバーしていただけると現場がとても助かっているはずです。それぞれのライフスタイルに合わせて補完し合いながらシフトを組めるとよいと思います。

常に挑戦し続ける大人を保育業界に増やす

安永:私は、たとえ何歳になっても前のめりに人生を駆け抜けていくような方がたくさんいる会社を創りたいと若いころから願ってきました。本当に偶然に髙澤さんがどろんこ会に入職してくださって、とんでもなくラッキーなことが起きたと感謝しています。髙澤さんのような事例を見て、保育士に挑戦してみようかなと保育業界以外から飛び込んできてくれる人がいるかもしれません。子育てにおいても、若い保育士の自己成長においても非常に重要な役割を果たしていただける可能性を秘めています。そして、保育業界に、常に挑戦し続ける、「生きる力」をもった大人がたくさん増えれば、この国を変えていけるような力になるのではと思います。

インタビューする安永理事長
インタビューする安永理事長

髙澤:私もどろんこ会に入職してからいろいろな場所で発信をする機会をいただくようになりました。最近では講演会にも呼ばれるようになり、セカンドキャリアを意識する年代の方が聞きに来てくださいます。皆さん、60歳といってもお若いです。そういった場で「保育って面白いですよ」ということを話しています。

インタビューに応える髙澤さん
インタビューに応える髙澤さん

安永:保育士は一人の人間の人格形成にかかわる非常に大事な役割を担っています。数十年前に比べれば国も補助金をつけるようになり、社会的な待遇も上がってきています。だからこそ、常に挑戦し続けている人が働いている素敵な職場であるということを言える未来を一刻も早く実現したいです。それには髙澤さんのような方が増えていくことが不可欠だと私は思っています。これからもお体と相談しながら、よい塩梅で長く保育士を続けていただけたらと願っています。

髙澤:ありがとうございます。できるかぎり長く長くお世話になりたいと思っています。

どろんこ会の象徴的な完全併設施設に樹木を寄付

終始なごやかな雰囲気で対談した二人。この対談は東京都東大和市の東大和どろんこ保育園x子ども発達支援センターつむぎ 東大和で行いました。

2024年、東京都初の認可保育園と児童発達支援センターの完全併設施設が開園することを記念し、髙澤さんから樹木の寄付をいただいたという背景がありました。

東大和どろんこ保育園のクスノキ
髙澤さんが寄付し、東大和どろんこ保育園に植樹されたクスノキ

髙澤さんの「にんげん力」がこのクスノキのようにどろんこ会グループに根を張り、枝を伸ばし、広がっていくことが期待されます。

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