子どもがプライベートゾーンを見せ合いっこしていたら?日々の保育から始める、どろんこ会の性教育
2026.08.06
「何してるの?!」「見せちゃダメ!」
子どもたちがプライベートゾーン(水着で隠れる身体部分と口)を見せ合ったり、触ろうとしたりしている場面に遭遇したとき、私たち大人はつい慌てて叱ってしまいがちです。
しかし、子どもが性やからだの違いに興味を抱くのは成長の過程で見られるごく自然な姿。頭ごなしに否定せず、適切な関わり方をあらかじめイメージしておくことが大切かもしれません。
今回は、乳幼児期の性教育に詳しい東大和どろんこ保育園(東京都東大和市)の宮澤施設長に、そのヒントを伺いました。

見せ合いっこに遭遇したとき、大人はどう関わる?
──子ども同士でプライベートゾーンを見せ合っている場面に出合ったら、どのように対応すればよいでしょうか。宮澤:からだの違いに興味が湧くのは子どもにとって自然な姿です。ですから、叱ったり問題視したりせず、まずは「からだっておもしろいね」と、その興味や気持ちを受け止めます。
そのうえで「自分のからだは自分だけの大切なもの。だから、他の人に見せていいところと見せないところがあるよ」というルールを落ち着いて丁寧に伝えます。
どろんこ会では、毎年5歳児を対象にプライベートゾーンについて詳しく説明する時間を設けていますが、その特別な機会に頼るのではなく、日常のちょっとした場面をとらえて繰り返し伝えていくことを大切にしています。

大切なことは「日々の積み重ね」
──言葉で説明すれば身につくものでしょうか。宮澤:知識として教えるだけで身につくものではありません。子どもが自分のからだを大切にし、相手のからだも大切にできるようになるためには、まず自分自身が大切にされる経験が必要です。
「自分の気持ちを聞いてもらえた」「自分のからだに丁寧に接してもらった」という経験を積み重ねることで、子どもは実感を持って「自分のからだは大切」「だから他の人のからだも大切」と理解していきます。毎日の保育そのものが、性のルールを伝える大切な土台になるのです。

宮澤:どろんこ会には、基本ルールとして「後ろから急に抱き上げない」という決まりがあります。そのため、抱っこする際やおむつ替え、鼻水を拭く時など、子どものからだに触れる際は必ず「〜していい?」と本人の意思を確認するようにしています。
言葉を発しない0歳児に対しても基本の姿勢は同じです。たとえ言葉による応答がなくても、「だっこするね」「おむつ替えるね」と丁寧に言葉をかけていく。その一つひとつの関わりが「自分は大切な存在」という感覚を育みます。どれだけ忙しくても、この言葉かけは欠かしません。

宮澤:子どもが嫌なときに「いや」と安心して言える関係をつくることを大切にしています 。子どもは大人が思う以上に「いや」と言えないことがあります。そのため「いやだったら『いや』と言っていいよ」「やめてほしいときは『やめて』と言っていいよ」と伝え続け、子どもが意思表示できるよう支えます。
子ども同士のけんかも大切な学びの機会です。「ごめんなさいは?」と形だけの仲直りを急がせるのではなく、子どもが「いやだ」という感情を十分に感じ、それを自分なりに言葉で表せるよう見守ります。

宮澤:そうして自分の気持ちを伝えられるようになったら、「相手から『いやだ』と言われたらやめる」、最終的には「やめてくれたら『ありがとう』と伝える」姿を目標にしています。

宮澤:その通りです。自分が受け入れられてきた経験の積み重ねが、他者を受け入れる土壌になります。私たちは人格の基礎となる「自己と他者への尊重」を、日々の生活の中で育んでいるのです。

背景にある子どもの権利に基づく「包括的性教育」
こうしたアプローチは、子どもの権利に基づく「包括的性教育」の考え方とも重なります。
包括的性教育は、性に関する知識を教えることだけではありません。自分のからだや気持ちを大切にすること、相手の意思を尊重することなど、健康とウェルビーイング(幸福)を実現するための幅広い視点を発達段階に応じて伝えていくものです。ユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』でも示され、今日では世界に広く共有されています。

また、国内でも2026年12月25日「こども性暴力防止法」の施行に伴い、保育所等でも子どもに「こどもの権利」や「性のルール」を伝えることが本格的に求められるようになります。
子どもに伝えたいこと
- 自分のことは自分で決めていい
- 自分の意見を言っていい。自分が嫌な時は「嫌だ」と言っていい
- プライベートゾーンを他の人に見せたり触らせたりしない
- それぞれの性の違いを認識し、互いの考えや気持ちを尊重する
- 人と人との間にある安心・安全な境目(境界線)を大切にする
『こども性暴力防止法施行ガイドライン』を基に広報部で整理
保育にたった一つの正解はありません。だからこそ私たちは、「こんな時どうする?」とスタッフ同士でひざを突き合わせ、よりよい関わりを問い続けています。
どろんこ会グループはこれからもスタッフ一丸となり、日々の生活の中で子どものからだと命を守り育む保育を実践してまいります。
もっと詳しく知りたい方へ
書籍出版のお知らせ
2026年秋、どろんこ会グループより書籍の出版が決定いたしました。
書名(仮):『保育現場で取り組む0歳からの性教育 からだと命の大切さを伝え「生き抜く力」を育てる』本書では、どろんこ会が20年以上にわたり培ってきた性教育の実践を大公開。日常の保育ですぐに活かせる事例を豊富に紹介しています。
「就学前の性教育って何から始めればいいの?」「包括的性教育について知りたい」といった疑問や関心をお持ちの方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。詳細は改めて公式ホームページ等でお知らせいたします(2026年8月6日現在)。
講座・講師派遣のご案内
乳幼児期の包括的性教育に関する研修を行っています。保育者向け研修のほか、保護者の方や子どもを対象に、からだと命の大切さを伝える講座も実施しています。ご関心のある方はお気軽にお問い合わせください。

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